お色気の裏にあるジャーナリズム
性風俗のなかにもこうした反骨精神を読み取るジャーナリズム精神は、お色気深夜番組のなかに当初からあったものだった。
お色気深夜番組の元祖と言える『11PM』(日本テレビ系、1965年放送開始)はストリップ特集やベッド体操などのお色気企画が良識派から批判され、「エロブンPM」などと揶揄もされた。
だが司会の大橋巨泉は早稲田大学政治経済学部新聞学科の出身で、元々ジャーナリズム志向が強かった。『11PM』でも「巨泉の考えるシリーズ」というコーナーをつくり、日韓問題、性教育、福祉などの硬派なテーマに踏み込んで高く評価された。
1980年代になると、深夜番組は一転して若者向けの色彩を強めていく。その先鞭をつけたのが、フジテレビ『オールナイトフジ』(1983年放送開始)である。素人の女子大生がMCやリポーターを務め、その斬新さがウケてブームを巻き起こした。とんねるずがブレークしたのもこの番組。AVを紹介するコーナーや風俗店のリポートもあり、お色気要素も残っていた。
『トゥナイト』、そしてその後継番組である『トゥナイト2』(1994年放送開始)は、この中間に位置する。大人の男性向けの部分を残しながら、若者文化も意識した内容で、性風俗だけでなく、プレイステーションの発売など当時活況を迎えていたテレビゲームについて最新情報を熱心に伝えていたのはその一例だ。
リポーターの高尾晶子や現在は国会議員の青木愛、あるいはディスコ・ジュリアナ東京のお立ち台ギャルとして有名だった「荒木師匠」こと荒木久美子など、それまでになく女性出演者が目立っていたことも特徴だった。
「トゥナイト」が「朝生」を生んだ
『トゥナイト』でジャーナリズム精神が発揮されたのは性風俗だけではない。ほかに世を騒がせた「ロス疑惑」などの事件、そして政治の話題もよく取り上げられた。
政局が動くと出演していた政治評論家の伊藤昌哉なども記憶に残るが、もうひとり政治関連の企画にレギュラー出演していたのが田原総一朗だった。当時「政界の暴れん坊」の異名をとったハマコーこと浜田幸一と激論になり、話題を集めたこともある。