「最初の30分は、ガッチガチでした」逮捕から1年半ぶりに家族と再会したときの状況

――家族には会ってはいましたか。

橋爪 プログラムのひとつに、家族と直接会うというのがあるんですよ。それが、逮捕から1年半ぶりの再会でした。めちゃくそ緊張しました。

 実家に戻って最初の30分は、ガッチガチでした。ちょっと、全員が他人行儀になってしまって。でも、やっぱりそこから戻るんですよね、家族に。

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――プログラムを受けているときの支えって。

橋爪 そんな厳しい場所じゃなかったので、歯を食いしばって耐えることもなくて。でも、3段階、12ステップのプログラムなので、「まずは卒業しなくちゃ」と思うんですよ。途中で施設を出ていってしまう子もいるんだけど、1年が経ってきたくらいに「ここまで来たからには、絶対に卒業してやる」って、目の前のことをひとつずつクリアしていって。

 仲間がいたのも大きかったです。楽しい時間が送れたし。それは支えになってたかもしれないです。

――薬物のことを考えたりは。

橋爪 施設が施設だし、山に囲まれていたので、まず環境的に薬物のことは考えられなかったです。プログラムで、やることがいっぱいありましたしね。あと、僕は常習性がなかったのもあってか、「また、やりたい」という欲求には襲われなかったですね。

 ただ、橋爪功の息子というのはストッパーになってたとは思います。あれだけ大々的に報道されたってのは、ストッパーとして非常に大きいですね。また薬物に手を出したら、あのとき以上の騒ぎになるだろうし、ましてや施設でやったなんてことになったら、どんなふうになるか恐ろしくて想像もできない。なので、できなかったというのが近いですね。これはいまもそうですね。

 あの頃の友達とは、関係を完全に絶っていますし。

「僕は前を向いていけてる」啓発活動で伝えていること

――依存症回復をテーマにした映画『アディクトを待ちながら』(2024年)で俳優業を再開しましたが、依存症問題の啓発活動もされていると。橋爪さんの体験を通して、どのように薬物の怖さを伝えているのでしょう。

橋爪 薬物の怖さって、あんまり実感がないんです。なので、怖さを聞かれたら、治療について話すようにしているんです。これ、語弊があるかもしれないんですけど、「助けたい」って気持ちはあんまりないんです。

 それよりも「一緒に進んでいこうよ」という感じ。「僕はこんなこと経験したんだけれども、いまは前を向いていけてる。だから、貴方にもその道はあるんだよ」って。依存症になってしまっても、治療できるし、回復できるわけですから。横一列になって、そこに目を向けながら、進めたらなって気持ちですね。

――子供の頃は『ゴジラ』シリーズが好きだったとのことですが、『ゴジラ−1.0』(2023年)にお父さんがワン・シーンだけ出演されていますよね。功さんと山崎貴監督の馴染みの店が一緒で、そこで山崎監督と会って『ゴジラ−1.0』のことを聞いた功さんがエキストラでもいいから出してほしいと迫って、出演が実現したという。

橋爪 父親が出ているシーンって、僕らみたいなゴジラのファンからすると最高潮を迎えるところなんですよ。ゴジラが熱線を吐くという、絶望的でありながら荘厳でもあるシーンで。僕、あそこで涙が出かかってたんですよ。

 ハリウッドで『ゴジラ』が撮られたのも嬉しいけど、生みの国である日本でこんな完成度の高い『ゴジラ』が作られたわけですから。そうしたら、父親が映ってるでしょ。その瞬間にスンッて涙が引っ込んじゃって。父親があのシーンを支配しちゃっていて、ゴジラどころじゃない。

――でも、大好きなシリーズに自分の父親が出ているのは最高に嬉しいことなのでは?

橋爪 どーなんですかね(笑)。それはそれで複雑ですよ。

 

撮影=山元茂樹/文藝春秋

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