2017年6月2日、覚醒剤取締法違反の現行犯で逮捕された俳優・橋爪遼(38)。懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決を言い渡され、2020年に猶予期間を満了。現在はフリーの俳優として活動しながら、依存症に関する啓発活動を行っている。

 俳優・橋爪功(83)を父に持つ彼に、岸田今日子や渡辺謙といった大御所が家を訪れていたという家庭環境、いじめを受けていた学生時代、俳優を目指したきっかけなどについて、話を聞いた。(全3回の1回目/2回目に続く)

橋爪遼さん ©山元茂樹/文藝春秋

◆◆◆

ADVERTISEMENT

舞台があるたびに、父親に連れて行かれてた

――いつ頃から、橋爪家が一般的なサラリーマンの家庭とは違うと意識しましたか?

橋爪遼(以下、橋爪) 幼稚園あたりですかね。父親が、舞台があるたびに僕を連れて行っていて。それで父親が、舞台の上ではわりとすごい人なんだなと認識するようになったと思うんですよね。

 うちの父親は「演劇集団 円」という劇団の俳優なんですけど、円で「円・こどもステージ」という児童向けの芝居をやってたんですよ。子供を桟敷席(さじきせき)とか前の席に座らせて、芝居を見せるという。しょっちゅう、そういうのに連れて行かれてたんですね。

――その児童向け舞台にお父さんは。

橋爪 出てます。なので、父親の出てる舞台を観に行くという形です。それで、父親は舞台に立つ人なんだと認識するようになった感じですかね。時々、児童向けじゃない芝居も見せられてたんですけど、そこでは父親が大人たちとガーッとセリフをまくし立てていて。それを眺めては「なんなんだろう? この人は」と思ったのを、なんだか覚えてますね。

――お父さんとしては、我が子に舞台や演劇に触れてほしいといった考えが。

橋爪 いや、ないですね。あんまり深く考えてなかったと思います。ただ単純に、そういう家庭環境だったというか。父親の仕事場を見ることができる環境だったんじゃないかなと。やっぱり、劇団の方とかうちに来てましたし。

 

渡辺謙さんを見た瞬間に「殺される!」と思った

――橋爪家を訪れる、演劇集団円の俳優というと。

橋爪 それこそ、岸田今日子さんとか。でも、小さい頃はすごい俳優さんだなんて知るよしもなくて。岸田さん、『学校の怪談 2』(1996年)でろくろ首の校長先生を演じているんですよ。それで“生の岸田さん”ってことで「生岸、生岸」なんて呼んでました。いまから考えると、「なんてことしてんだ」って話なんですけど。しかも、「首、伸ばして」とか言ってたらしくて(笑)。

 でも、父親は広く交友を持ってる人でもなくて。「自分は自分」という世界観があるので、誰かを家に招くってことがほとんどなかったんですよ。ほんと、円の後輩の方とかを呼んだりするくらいで。