――どちらが実情に近いのですか?
東野 ロシアが本当にNATOと闘えるかと言ったら、私は否定的に見ています。というのも、ロシアはウクライナがNATOに加盟することを一番恐れているんですよ。もし、加盟したら北大西洋条約第5条での適用範囲になり、NATO全体で守られることになりますから。
エストニアやポーランドがウクライナの加盟に前向きなのも「たとえ停戦してもロシアの侵攻は繰り返されるので、それを防ぐためにとりあえず入れよう」という考え方です。ただトランプ大統領は今のところNATO加盟案は考えていないようです。
北朝鮮側が戦死者を出してまで派兵するメリットは?
――ウクライナの戦場で北朝鮮の兵士が捕虜になったニュースが先日ありましたが、そもそもなぜ北朝鮮の兵士はロシアに派兵されることになったのでしょう。
東野 24年6月に、ロシアと北朝鮮の間で総合的防衛パートナーシップ協定という条約が締結され、その延長と言われています。ロシアがどうしても北朝鮮の協力が欲しかったのか、北朝鮮が意図的に派兵したのか、解釈は識者の間でも分かれているんですがどちらにも動機はあります。
ロシア側の動機はシンプルで、兵士の温存を図って新たな徴兵を避けることです。国内の特にモスクワやサンクトペテルブルクのような大都市で大きな動揺を与えないためには、ロシア人の戦死者より他国の戦死者の方がましだと考えてもおかしくありません。
――北朝鮮側には戦死者を出してまで派兵するメリットがあるんですか?
東野 もちろん、あります。例えば兵士が戦場に出向くことで最新の兵器の情報を得たり、兵器もロシアからもらえるかもしれない。実際に最新兵器がロシアから北朝鮮に提供されているという話もあります。1万人以上の若い兵士を前線に送り込んで肉弾戦をやっていると言われ、将来的には4万とか10万人という数字も出てきています。
その中で生き残った兵士が戦場での経験を持ち帰ることが出来たら、朝鮮半島の有事の際に彼らがロシアで得た経験を活かすとも言われているんです。
――きな臭い話になってきますね。