昨年10月、ロシアによるウクライナ侵攻について発信を続ける筑波大学の国際政治研究者・東野篤子教授に対して、SNS上で誹謗中傷として茨城県警の幹部が侮辱罪で略式起訴され、罰金刑が科される出来事がありました。
メディアで発言する女性専門家は批判や偏見にさらされることが少なくないですが、東野先生は誹謗中傷を受けるさなか、ある「違和感」を持ったと言います。なぜ女性研究家は攻撃のターゲットになるのか、そして東野先生はどんな心境だったのかについてお話を伺いました。
※取材は2024年12月23日に実施しました。
「お化けみたい」「女に軍事なんかわからない」
――ロシアによるウクライナ侵攻について発信を続ける東野先生に対して、誹謗中傷を繰り返して侮辱罪で起訴された人が現職警官だったことにびっくりしました。具体的にどんなことを言われてきたのでしょうか。
東野 大きく分けて3つでしょうか。1つは、ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、メディアやSNSでロシアは間違っていると言い続けてきたので、ウクライナの立場に立ちすぎだという批判。
2つ目はルッキズムに関するもの。ロシアの侵攻が始まってからしばらく、1日にテレビ局を幾つもはしごして解説していたので、疲れちゃって目の下にクマが出来てしまったんです。また、私はエラが張っているんですけど、それらを踏まえて「お化けみたいなやつはテレビで見たくない」と。「化け物」と言われたこともあります。
そして3つめは、これは根深い問題なんですけど「女に軍事なんかわからない」というものですね。
――東野先生は、SNS上の批判中傷に対してしっかり返している印象があるのですが、無茶苦茶エネルギーが必要ですよね。
東野 私は学者なので、意見を曲解して真逆の解釈を流布されてしまうのは致命的なことなんですね。なのでそれは黙認できず「それは解釈が違います」と言い返すんです。すると向こうが感情的になって、とんでもない方向に論点が向いてしまう。例えば、私は9万人のフォロワーがいるんですけど「9万人のファンネルを連れて自分を潰しに来ている」と非難されたり。
――内容が正しいかどうかではなくて、フォロワー数の話になってしまう。
東野 しかも私は、ファンネルという言葉をSNSをやるまで知らなくて。どうもガンダム用語で、ガンダムが子機のようなものを飛ばして攻撃することから、自分の支持者に相手を攻撃させるように仕向けることを意味するらしいですね。でもそうやって、解釈の間違いを指摘しただけなのに「数の力で自分を潰そうとしている」と何回も書かれたんですよ。