今回の高松市の事件には特に胸を痛めたという。逮捕後の供述によると、被告女性は、赤ちゃんが無事に生まれたら赤ちゃんポストに預けたいと思っていたためだ。

「私どもの『こうのとりのゆりかご』に連れて行くことを考えておられながら、このような結果になってしまったことは非常に残念です。せめて、被告女性の背景にある、生きづらさや困難を解明する役に立ちたいと思いました」

5年間で3回、孤立出産と遺棄を繰り返した

事件のあらましを振り返る。

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2024年2月14日に警察官が女性の自宅アパートを捜索し、遺体を発見したという。

逮捕容疑は2023年6月下旬に自宅アパートの押し入れに赤ちゃんを遺棄したというもの。遺体の大きさは約45センチで、タオルに包まれ、ポリ袋に入れられた状態だった。
(2024年2月16日・朝日新聞香川版)

押し入れからはさらに、出産時期の異なる二遺体が見つかる。遺体は腐敗が進み、司法解剖では性別がわからない状態だったとも記事は伝えている。

後日、DNA鑑定で赤ちゃんが三人とも女性の子であることがわかった。女性は2018年、2020年、2023年の3回、孤立出産していた。

2018年と2023年の二遺体の遺棄については、2024年4月の公判で起訴内容を認めている。

事情が異なるのは、2020年4月中旬に産んだ三人目の赤ちゃんだ。女性は出産後、数日間育てたのちに殺害していた。遺体にはベビー服が着せられていた。

2024年5月、香川県警は女性を殺人容疑で再逮捕した。警察の取り調べに対し、女性は経済的な問題を理由に挙げたという。

被告となった女性たちの悲しい共通点

慈恵病院による孤立出産殺害遺棄事件被告女性支援は10件を超えた。筆者は関連する7件の裁判を傍聴したが、被告女性7人のうち6人が産婦人科を受診していなかった。

上記7件のうち4件について、興野氏が精神鑑定を実施している。興野氏は裁判所に意見書を出し、事件によっては、法廷で境界知能(平均知能指数を100とした場合、51~70未満が軽度知的障害、70~84が境界知能)やその他の神経発達症との関わりを証言した。