孤立出産が引き金となったこれらの事件の傍聴を重ねると、被害者はもう一人いることに気づかされる。一人目の被害者が亡くなった赤ちゃんであることはいうまでもない。もう一人の被害者は、ほかの誰でもない、被告女性だ。

前述の通り、興野医師が精神鑑定した4人の被告女性は全員が境界知能であることがわかった。境界知能の場合、状況を認識する力が弱く、今、自身に起きている問題や出来事を客観的に捉えることが苦手だという。それは、他者に事情を話して助けを求める行動を起こしにくいという現象に現れる。

また、神経発達症との関わりを興野氏は指摘した。たとえば、「片づけられない」「時間の約束を守れない」「計画的にお金を管理できない」「衝動的な行動が多い」といった生活態度が見られた場合、それらはADHDの特性との関わりが考えられるという。

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さらに、こうした事件と結びつきやすいADHDの特性があるという。興野氏は次の2点を挙げた。

他人への依存が最悪の結果をもたらす

まず、性衝動が強い傾向だ。

被告女性の中にはデリヘルや風俗店勤務だった人が複数いた。客に避妊を求めたのに応じてもらえず妊娠したケースもあった。妊娠させられやすい職業環境に加えて、依存傾向が負の方向に進んだ場合、ホストクラブや風俗の闇営業などアンダーグラウンドの構造に取り込まれてしまうことは、すでに歌舞伎町界隈に関する多くの報道が伝えている。

ある被告女性は風俗勤務で知り合った男性と過度な依存関係に陥り、稼いだ金を吸い取られて貧困状態に陥っていた。

2つめは依存性の高さである。

「もちろん、依存性が高いからといってマイナスなわけではありません。自分の好きなものと出会い、それを応援してくれる周囲の人たちなど環境が整えば、対象に集中し、世界を切り開いたという事例は珍しくありません。

ただ、それがマイナスのほうに出た場合、極端な男性依存や性依存といったことになり、事件につながることがあります」(興野氏)