利用者さんに気持ちよく過ごしてもらうために、相手がしたいと思っていることを読み取ってあげる、ほんの小さな変化も見逃さないという意識をもって働いている介護職は多いです。
利用者さんに接していく中で、こんなすてきなところがあるんだとか、こういうかわいらしい面があるんだということを見つけていく楽しさもあります。
だからこの仕事が好きなのだと思います。
介護職はまっすぐな「ありがとう」を受け取れる
介護職は、看護師さんなどと同じように、相手ととても近い距離で仕事をします。その分、相手が発する言葉も感情もストレートになりますから、ダイレクトに伝わる刺激的な仕事という面があります。もちろん辛い言葉や悲しい言葉を言われることもあります。でも、この方は今そういう気持ちなのだなと受け止めていきます。
そして何より、感謝の言葉は、気持ちがまっすぐに伝わってきます。
社会でさまざまな人と接する中では、社交辞令というものがあります。それを否定するつもりはありませんが、介護で利用者さんに接して「ありがとう」と言ってもらうときは、決して社交辞令ではありません。そんなときは素直に嬉しいです。
相手の話を否定せず、のっかっていく
高齢の利用者さんには認知症の方もいます。認知症の方に接するときは、絶対に相手の発言や行動を否定しません。
たとえば、「これから家に帰ります」と言って施設から出てしまうような場合、「ダメだよ、ここが家でしょう」とは言いません。「そうなんですね。じゃ、一緒に行きましょうね」と言って時間の許す限り、同行します。
幻影などが見えるようになる人もいるのですが、「変なものがいるんだけど」と言われたら、「何も見えませんよ」ではなく、「何でしょうね。ちょっと見てきますね」と言って見に行きます。
認知症の方の発言や行動をすぐに否定してしまうと、相手は混乱してしまうのです。話を合わせるというより、むしろ“話にのっかる”という感じですね。話にのっかって、コミュニケーションをとっていきます。介護職の人はみんなそうなんじゃないかなと思います。
“話にのっかる”という意味では、思い出深い出来事があります。
お相撲が好きな認知症のおばあちゃんと仲良くなりまして、一緒にテレビの相撲中継を見ていたときに「ねぇ、秋場所、どうしたの?」って言われ、「膝を怪我したから、今は休場中なんだよね」と返したりしていました。どうもそのとき、私はお相撲さんだと思われていたようですね。