入居前にはケアマネージャーさんともじっくり話をしますが、介護のプロの視点を得ることで、家族だけで看る場合とはかなり変わってくるものです。介護のプロと連携することで、利用者さん自身が施設で暮らしやすくなるでしょうし、ご家族も安心できて、気持ちに余裕が出てくると思います。

温かな笑い声のある 高齢者施設が増えるといい

 入居したら、そこが生活の場になるのですから、快適に過ごしてほしいという視点から、ひとつ、私なりにちょっと考えてみた高齢者施設の形があります。

 私は音楽が好きなんですけど、メタル、J-POP、テクノ、クラシックなど、好きな音楽のジャンルごとに生活の場を選べる高齢者施設があったらいいな、なんて思います。

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 音楽は刺激になると聞いたことがあるので、好きな音楽を聞いて過ごして、歌ったり、ときには踊ったりしてもいいですし。交流会があってもいいですよね。クラシック棟の人もたまにメタル棟へ行って刺激を受けるというのもアリかも。スタッフも自分の好みの音楽がかかるところで働くのは、毎日がより楽しくなるような気がします。もちろん、音楽よりも読書が好きという方が過ごせる読書棟なんかもいいと思います。

 それから、高齢者施設でもこぢんまりした飲み会があってもいいんじゃないかなと思います。季節ごとにイベントなどはいろいろ開催されていると思いますが、もっと日常的な、軽い晩酌のようなものですね。入居前に晩酌を欠かさなかった人は、入居後に飲めなくなっているとしたら、楽しみをひとつ奪われてしまったようなものですから。もちろん、利用者さんの健康面をクリアしたうえでということですけれども。 

 高齢者施設に入居しても、毎日を楽しく、少しでも笑顔になって過ごしていただきたい。温かな笑い声が絶えない施設が増えるといいなと思います。そして預けるご家族にとっても、親が毎日を気持ちよく過ごしていることを感じて、安心していただきたいです。

 以前、あるテレビ番組で、迷い歩きをする認知症の方にとことん付き添って歩く高齢者施設があることを知りました。安全を確保したうえで本人の気が済むまで付き合って、一緒に歩きながらいろいろな話をされるのです。とてもいいなと思います。ひとつの理想ですよね。ただ、こうした対応は人手が足りていないとできません。介護職がもっと増えたら、もっともっといろいろなことができるのにと思います。

取材・文◎佐藤紀子

介護現場歴20年。

安藤 なつ

主婦と生活社

2024年1月31日 発売

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