頼ることを躊躇しないでほしい

 とくに認知症を発症している場合は24時間体制で見守っていく必要がありますから、ご家族で世話をするには限界があると思います。親を看ていると、かならず疲弊して世話をする人の生活が立ち行かなくなってしまいます。

 “もう限界!”という状況になってから、施設を探したりヘルパーを頼ったりということも多いようですが、もう少し早い段階で誰かに頼める社会になればいいと思います。

 ご家庭によってさまざまな事情があるとは思いますが、気持ちに余裕があるうちのほうがいろいろな判断をしやすいでしょう。ギリギリまで我慢せず、施設に預けることや介護職に頼ることを躊躇しないでほしいです。

ADVERTISEMENT

”介護って大変”は、親を看なければと思うことから生まれる感情

「介護って大変ですよね」と言われることが少なからずあります。でも、それは親を看なくてはならないと考えている方の思いなんですよね。経験もなく、仕事をしながら、家庭を守りながら、介護をするとなれば、確かに大変なご苦労だと思います。それを想像すると、「介護って大変」と思うでしょう。

 

 でも、介護職にとって介護は仕事です。どんな仕事にも、やりがいや楽しいことがある反面、難しいことや大変なこともついてきます。同じことです。だから介護という仕事が特に大変だとは思いません。

 私は好きでやっている仕事なので、「ドンとお任せください!」という気持ちです。私だけでなく、多くの介護職の人たちはそういう気持ちなんじゃないでしょうか。

 利用者さんにはそれぞれの人生があり、普段の発言や行動には経験してきたことが混じってきます。昔あの仕事をしていたからこういうふうに行動しているんだなと予測して対応することも多いのですが、これはその方の人生を垣間見られることでもあり、職業としての楽しさがあります。また、利用者さんの発言や行動を理解して接することは、気持ちよく過ごしていただくことにつながるので、やりがいにもなります。

 たとえば、その方がもとは学校の先生で、どこかに行こうとしていたのなら、「そろそろ授業が始まる時間ですね」などと話しかけると、思い出話を楽しく話してくれるようなこともあります。