「自分で考える時間」が減っている
「先生が何かを教えるドラマ」から、「先生が子供に答えを教えず、自分で考えさせるドラマ」への転換が行われている、という話は先ほどから述べている通りですが、現実の学校でも、これと同じことは行われています。
僕自身だけでなく周りの経験や、普段から接している学校の先生・生徒を見ていると、今まで学校教育現場では、先生が「答え」を与えるような授業が多かったです。先生が生徒に何かを教えて、それを生徒が受け取り、学ぶ。しかしそれは、生徒（子供）が先生（大人）の意見をただ受け入れているに過ぎません。素直に相手の話を聞くというのは重要ですが、それでは生徒が自分の頭で考えるという時間を奪っているとも考えられます。
子供たちが自分で考える時間というのは、年々どんどん少なくなっていってしまっています。これは人口の変遷を見るとわかります。1965年の人口で見ると、15歳未満の人口が約2500万人なのに対し、15歳以上の大人の数は7000万人余りでした。1人の子供に対して大人の数は約3人いたわけです。
しかし2020年代になり、15歳未満の人口は約1500万人なのに対して、15歳以上の大人の数は約1億1000万人。1人の子供に対して約7人の大人がいる計算になります（総務省「我が国のこどもの数」）。
1人の子供に対して、大人の数が3人しかいなかった時代から、1人の子供に対して7人の大人がいる時代に変化しているわけです。こうなると、子供は昔よりも手をかけて育ててもらうことが多くなります。
スマホで“すぐに”答えがわかってしまう
つまり、子供が自分1人で考えて行動するよりも、大人から教えてもらうことが当然になってしまい、自分で答えを導くのではなく大人が持っている答えを受け入れるのが普通になってしまっていると考えられます。
これは学校の先生方から聞くだけでなく、一般的にもよく言われることですが、令和の時代には「良い子」が増えています。金間大介著『先生、どうか皆の前で褒めないで下さい』（東洋経済新報社）という本が2022年に発売されて話題になりました。内容はタイトルの通りで、“今の若者たちは大人や社会が求める「良い子」を演じ、そこから逸脱することをとにかく嫌い、褒められたり浮いたりするのを極度に嫌う生態があるのではないか”ということが語られています。
