これはきっと、少子高齢化という大人が多い時代背景や、大人が子供に答えを教えるのが当たり前になっている状況が原因なのではないかと考えられます。その上、スマホやタブレットにより、昔よりも簡単に疑問があればすぐに答えを得ることができてしまいます。わからないことがあったらネットで検索すれば答えが出ますし、最近ではChatGPTに聞けばなんでも教えてくれます。
紙の重い辞書を使っていた時代では、わからない英単語を調べている間に「この英単語ってどういう意味だろう? なんか似たような単語があったような気がするな」と考えていた人も多いと思いますが、今はスマホで調べれば一瞬で答えが出ますから、さほど考えなくても答えが出るようになっているのです。
「頭で考える習慣」はすぐに身に付かない
こうした時代背景もあるのかわかりませんが、昨今学校現場では「主体的・対話的で深い学びの実現」が求められるようになりました。これは「アクティブラーニング」とも呼ばれています。金八先生のような「先生が答えを教えるだけの従来型の授業」から、「生徒自身がしっかりと考える授業」をして、意見交換したり議論したり対話したりする時間が多い授業への転換が求められるようになっているのです。
しかし僕が現場の先生方に話を聞いてみると、一部の優秀な先生はこうした取り組みを積極的に行っている反面、まだまだ浸透し切っていないのが実情のようです。また、僕自身も講演などで相談を受けると生徒や親御さんたちに「自分の頭で考えよう」「考えてもらいましょう」などと伝えていますが、実践するのはなかなか難しいという声も聞こえます。
そんな過渡期の中で、御上先生が生徒に「考えて」と言い続けることには、いろんな意味があるように考察できると思います。
御上先生が生徒のことを子供扱いしていないという見方もできるでしょうし、先生に求められているものが大きく変化しつつあるということを象徴しているようにも感じます。このような目線で「御上先生」を観ていただけると、このドラマがもっと楽しめるかと思いますし、お子さんとの接し方も変わってくるかもしれません。
現役東大生 カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。
