電車内で泥酔した女性に「睡眠薬」を飲まして誘拐したのちに、わいせつ行為を働いた33歳の犯人。なぜ男の犯行がすぐには明るみに出なかったか? その卑劣な手口を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©AFLO

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精神科を悪用して睡眠薬を入手

「こうやって自宅に連れ込めば、好きなことができるんだぜ。目を覚ましたら、『無防備に寝ていたから、危険だと思って連れてきたんだ』と言えばいい」

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 橋本がエスカレートしたのはそれからだ。その後、橋本は精神科に行って「眠れない」と訴え、睡眠薬を入手した。それを「酔い止めの薬だ」と偽り、泥酔女性に親切を装って飲ませ、さらに酩酊状態になったところで自宅に連れ帰るという行為に及ぶようになった。

 その手口も巧妙なものだった。バッグを開けて身分証などで名前を確認し、親族や知人などを装い、女性の名前を呼び掛けながら、自分の自宅がある方面の電車に乗せる。降りる駅が近付くと、車掌に「彼女が酔っていて動けない。○○駅で降りるから、車椅子の手配を頼む」と要請し、まんまと駅員が用意した車椅子に女性を乗せ、タクシー乗り場に直行。自宅に連れ帰って体を触ったり、自分のペニスを握らせてしごかせるというわいせつ行為を何年にもわたって繰り返したのだ。

 被害者の一人である磯部有希さん(当時23)は、橋本の自宅近くの駅で泥酔しているところを見つかり、車椅子に乗せられてタクシー乗り場に運ばれた。

 そのまま橋本の自宅に連れて行かれ、その様子を見ていた近所の住民には「ホラ、ダメじゃないか。しっかり立って…」などと言って、交際相手を装った。

 橋本は有希さんのブラジャーを取って胸を揉みしだき、ズボンを脱がせて膣内に指を出し入れし、例によってペニスを握らせてしごかせた。