「右足の指先が壊死しています。これ以上広がるとマズイ。その部分を切除する手術をしましょう」「ええーっ!」

 婚活中の同僚のプロポーズを断ったことで、足の指をすべて失うことになった被害者女性A子さん。なぜここまで残忍な犯行が行われたのか? 2013年に起きた事件の顛末をお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む

交際を断ったことでA子さんは足の指をすべて失ってしまった。写真はイメージ ©getty

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「交際を断った男」に猛毒を仕込まれた被害者女性

「ええーっ!」

 A子さんは泣く泣く足の指先を切断した。足の裏もただれていた。足の痛みよりも悲しみとショックでベッドをのたうち回った。それでも医師は原因がはっきり分からず、「深爪が原因で、細菌が入ったのではないか」という可能性を打ち消せずにいた。 

 それから2週間後、A子さんが職場に復帰した。「大丈夫ですか?」と次々に声をかけられ、深谷からも「自分に手伝えることがあれば、何でも言って下さい」と言われ、「ありがとう」と返事した。

 それをきっかけにA子さんと会話する関係が復活した。自分の犯行であることもバレていない様子だ。深谷はその展開が愉快でたまらなかった。足を引きずるA子さんを介助するようになり、以前よりも親しくなることができたからだ。

「僕ともう一度、まっさらな関係からどうですか?」

 深谷はそれに乗じて、また求婚するようになり、A子さんは困り果てて、再び距離を置くようになった。

 必要最低限のことしか口を利かなくなり、深谷は「この関係を改善したい」と申し入れたが、A子さんにそっけない態度を取られ、「プライドを傷つけられた」と怒り、愛情が憎しみに変わった。

「もう彼女のご機嫌を取るのはやめよう。彼女が振り向くことはないんだろう。それなら彼女が会社からいなくなればいいんだ」