健康診断の結果という“数字の羅列”を、身体を読み解くコンパスに変える――。総合診療医・伊藤大介氏が、健康診断で受けるべき「オプション検査」のランキングを作成。その上位の検査について解説します

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検査数が多くて目移りしてしまう……

 オプション検査とは、健康診断で受ける基本の検査項目に加えて、がんを含めた特定の病気や症状を早期発見するために受ける、「より詳しい検査」のことです。通常、健康診断を受ける時に料金表をみながら、オプションとして自分が気になった検査項目を選びます。

 健診センターによって数は違いますが、「CT検査」「MRI検査」「血液ウイルス検査」「腫瘍マーカー」「マンモグラフィー」「骨粗しょう症検査」「リウマチ検査」「緑内障検査」……など、その検査数は約50個とも言われています。ただ、これだけ多くの検査があると、一体どれを受ければよいのか、目移りしてしまうのではないでしょうか。

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 実は、医者の視点からすると、「コストパフォーマンスが悪い」「検査してもあまり意味がない」と思えるオプション検査も少なからず存在しています。では、本当はどのような検査を受けるべきなのでしょうか。

 今回はオプション検査を受けるときに知っておきたい注意点を解説し、私独自の評価基準をもとに「積極的に受けるべき検査」をランキング形式で紹介していきます。

総合診療医の伊藤大介医師

どのようにランキングをつけたか

 では、どのような基準に沿ってランキングにしたのか、説明したいと思います。今回は5つの基準で選びました。

1 幅広い年齢層が受けられる

 実は、年齢によって「受けるべきオプション検査」は全く異なります。

 例えば、「マンモグラフィー」をはじめとした乳がんの検査は若いうちから積極的に受けた方がよい検査です。乳がんの罹患率は、30代後半から急増し、40代後半から60代後半にかけてピークを迎えます。したがって、50代になってはじめて乳がんの検査をオプション検査に加えても、少し遅いかもしれません。

 一方、「骨密度検査」は比較的年齢を重ねてから受けた方がよい検査です。一般的に、骨粗しょう症の年代別の有病率は、女性では50代で9人に1人、60代で5人に1人、70代では3人に1人、80歳代では2人に1人と、60代以降から急激に高くなります。逆に言えば、50代以下では、基礎疾患や骨折歴などがない限り、骨密度検査を受けても陰性になる可能性の方がかなり高いので、受ける意義は少ないでしょう。

 したがって、今回のランキングでは、幅広い年齢層に当てはまり、多くの人が「病気が見つけられてよかった」と思えるであろう検査を上位にしました。

2 信頼性が高い

 せっかく追加料金を払って受けるのであれば、費用や時間を無駄にしないためにも、検査結果が安定しており、実際に病気の初期のサインをしっかり捉えることができる検査を選ぶことが大切です。

 たとえば、最新の画像診断技術を用いた精密検査や、これまで多くの研究で有効性が確認されている血液検査などは、どの施設で受けてもほぼ同じ結果が得られ、実際に病気の兆候を確実に捉えることができるため、信頼性が高いと言えます。これらの検査は、結果が安定しているため、その後の精密検査や治療計画にも大いに役立ちます。

 一方で、まだ実績が少なく、検査を受けるたびに結果が変動するような新しい検査や、理論上は異常を検出できるとされながらも、結果にばらつきが見られる検査などは、信頼性が低い。こうした検査の場合、たとえ精密検査に進んだとしても「本当に病気があるのかどうか」が、依然としてはっきりしない状態が続いてしまいます。場合によっては誤った判断を招く可能性もある。

 したがって、今回のランキングでは「何回やっても結果が安定している信頼性が高い検査」を厳選しました。