「捨てる書類にホッチキス留め」で日銭を稼ぐ
神戸時代の仕事ですか?
たまにデザインの仕事なんかをしていました。アルバイトというよりも、無理矢理お願いして仕事をもらっていました。
神戸にぼくをかわいがってくれた保険会社の偉い人がいたんですよ。その人に「仕事がないんですよ」と言ったら、「ほんなら仕事をつくったる」と仕事をくれました。
その仕事は、まったく必要のない書類をホッチキスで延々と留め続ける作業でした。綴じたあとは捨てるんですが、それで日給1万円くらいもらいました。高校卒業してから、20年くらいは月6万円くらいで生活していたかもしれません。
本当に人に生かされてきたんです。それは上京後も変わりません。
人に「頼らせる力」で生き延びる
上京して、いまの家を契約するときにチビルマと怪談仲間の住倉カオスさんが付き添ってくれました。カオスさんが、契約書の職業欄に〈オカルトコレクター〉と書こうとしたぼくを止めて〈作家〉と書き直すように教えてくれました。不動産屋にしてみれば、〈オカルトコレクター〉って何? って話じゃないですか。それぐらい世間知らずな上に、はじめての一人暮らしでわからないことばかりだったんです。
ダブルブッキングや、遅刻ばかりするぼくを見かねた知り合いが、いまスケジュールの管理をしてくれています。彼がいなければ、今日もぼくはここに来れなかったかもしれません。
人に頼むって、なかなか難しいじゃないですか。でも、ぼくの場合は人に頼る力じゃなくて“頼らす力”でなんとか生き延びさせてもらっているのかも。
コロナ禍以降の令和の怪談ブームで、昔は月に1回あるどうかの怪談イベントが、いまは1日で2つも3つも開催されるようになりました。ぼくも、月に休めるのは2、3日くらい。
おかげで、収入は増えましたけど、お金が入ったらすぐに呪物を買うんで、貯金残高は実家暮らしの頃と変わらず常に6万円くらいです。呪物って、1体30万円とか、40万円しますからね。ただ収入が増えたと話すと“頼らす力”が弱まりそうな気がするから、本当はあんまり言いたくないんですけど(苦笑)。