「下に見ているなと感じることは多い」事業の話を聞いてもらいたいだけなのに、会いに行くと…
ーー事業説明をする起業家やベンチャーキャピタルは、誰かに紹介されるのですか。
松阪 私の場合は、紹介が多くて。そのほうが身元がわかって安心ですし、何かあっても相談できると思ったからです。
あとはスタートアップ関連のイベントに行って、そこで知り合った方たちにアポを取って、話を聞いていただく、ということをやっていました。そういう場合でも、なるべく共通の知り合いがいて、評判を確認できる方と会うようにしていました。当時から用心はしていたほうだったと思います。
でも、実際に会って仕事の話を聞いてもらうのって、ハードルが高くて。基本的に10人にアポ取ったら、まともに話を聞いてくれるのは半数以下で。むしろ話を聞いてもらえるとビックリする感じでした。
ーーそういった部分も含めて、スタートアップする人たちは足元を見られがちになりそうですね。
松阪 そうなんです。全員が全員とは言わないですけど、下に見ているなと感じることは多いですね。そもそも土俵に上がることがない、話を聞いてもらえないというのが、当時の最大の悩みでした。
だから、話を聞いてもらえるとなると「ビジネスチャンスだから行かなきゃ」と思ってしまうんですけど、下手に会うことがセクハラを生み出してしまう可能性がある。業界のそういった状況にも気がつきました。話を聞いてもらえないことは、単純にビジネスの機会損失も生み出しているなって。
「100万円出すから、愛人になってよ」と性行為を求めてくる人も…
ーーセクハラをする側は、とりあえず話を聞くことは聞くのですか。
松阪 人によると思います。事業計画書を持っていくんですけど、仕事の話を振ると、はぐらかされたりとか。話を聞いた後に、違う話に持っていかれたりするケースもあります。
徐々にプライベートな話にしていくんですよ。「どこに住んでるの?」とか「彼氏いるの?」とか「どういう人が好きなの?」とか。そういう話にまともに答えることはなかったですけど、当時の私は「こういう場では、そういう話になるものだ」と思い込んでしまうほど、セクハラが日常茶飯事で。
あとは金銭的な話を突きつけて、性行為を求めてくる人もいましたし。いわゆる、対価型セクハラですね。「100万円出すから、その代わりに愛人になってよ」とか、そういうのが多いかなあと思います。こちらが断ると、もうその人やその関係者と連絡がつかなくなったり。
ーーセクハラする側は、従わないと声を荒げたり?
松阪 そういったことはないです。基本的にみなさん賢いので、やり口が巧妙なんですよ。そこが業界特有の性被害の特徴だと思っています。証拠を取りにくいようにしたり、被害者が声を上げにくいようにしたりとか。みなさん、そういう術はすごい長けています。