ーー外野から「用心しないからだ」と逆に責められることを警戒してしまうでしょうし。

松阪 そうなんです。それは立派な二次加害なので、止める風潮を作っていきたいと思っています。

「お酒は飲まない」「薬指に指輪をする」セクハラ対策を講じていたのに被害に遭ったワケ

ーーご自身はいろいろとセクハラ対策をされていたようですね。

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松阪 プライベートの話を振られたら、相手の目を見ないようにするとか答えないとか。飲食の場で相手の言動がおかしいと思ったら、お酒を飲まず水に変えるとか。メガネを掛けたり、薬指に指輪をしたり。カウンター席に座らせられたら、テーブル席に移るとか。やたらと「セクハラは許せない」という話をするとか。

 あと、「下の名前で呼ばせてよ」とか言ってくる人もいるので、そういう場合は絶対に苗字のほうで会話するように持っていったり。

ーーその効果の程は。

松阪 あまり効果はありませんでした。いろいろな対策をしたうえで被害に遭って。今思うのは、被害を100%防ぐ方法はないということです。

 それでも、やっておけばよかったと思うことがあるとすれば、早い段階で国が支援している起業プログラムに入ったりすることですね。あとは、どうしても2人きりになってしまう場合は、いつでも録音を取れるようにしていれば良かった。ただ、突然セクハラや性被害に遭うことも多いので、実際は録音してる余裕はないんです。

 どんな状況でも、被害者が予防策を取れなかったことを責められるのではなく、あくまで加害者が悪いということを認識してほしい。殺人事件に巻き込まれた人に対して、「なぜ自衛しなかったんだ」「弱いから被害に遭ったんだ」という人はいませんよね。

 

2021年にはレイプ被害にも遭った

ーー対策を打つようになったのは、セクハラ被害を受けるようになってからですか。

松阪 私、保険の営業をしていたことがあるんです。多分ひと昔前に多かった感覚なのだと思いますが、「契約したら、必要以上に親密になれる」と思ってる人がたまにいて、当時はセクハラが起きやすいと言われていたんですね。それで、先輩から「指輪したほうがいいよ」とか、いろいろ対策を聞いてて。

 でも、保険の営業やっていたときよりも、スタートアップのときのほうが、セクハラのレベルや被害に遭う確率はケタ違いで。

ーーセクハラ被害を受けていた期間というのは。

松阪 2018年から準備して、2019年から起業に向けて動きました。そのとき会った人の中には、もちろん良い方もいましたが、「起業するぞ」となって半年以内にセクハラや二次加害に遭いまくって、早々に撤退せざるをえなくなってしまったんですね。2021年にレイプをされて、「もうダメだ」と思いました。

撮影=山元茂樹/文藝春秋

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