「女と仕事したくない」という男性起業家や投資家も…スタートアップ業界の深刻なジェンダーギャップ
ーーセクハラをする起業家や投資家は、もともと女性嫌悪や男尊女卑の考えを持っているところはありますか。セクハラをしてこなくても、起業しようとする女性に圧を掛けるとか。
松阪 「女と仕事したくない」という人はいます。最初のほうでも話しましたけど、事業計画書を見せに行ったら「なんもわかってないのに、そんなこと言えちゃうんだ」とか「女がこんなのできると思ってんの?」みたいに言われて。
事業計画書を読んだうえで言われるのなら納得もできますけど、読む前から「そんなのできないよ」とか「女とは仕事しないから」とか言われてしまうのは、いかにジェンダーギャップ問題が深刻かがわかりますよね。
そういうセクハラをする人の中には、自覚がない人もいます。あと、起業家やスタートアップ界隈の人たちって、「常識がない・クレイジーなほうがイケてる」と言われることもあるので、そういった影響もあるのかなと。
ーー「既存の考え方を持たない。それがイノベーションに繋がる」みたいな。自分の都合のいいように変換していると。
松阪 もちろんゼロイチで何かを生み出したり、イノベーションを起こすために、人とは違う考え方をする必要があるのかもしれません。しかしそれは、倫理観がなくていいとか、人権問題を無視していいという意味ではありません。個人的には、そこを混同している人が多いような印象を受けました。
あとは、スタートアップ業界って男子校みたいだってよく言われるんです。女性の起業家の比率が圧倒的に低いこともあり、ビジネスシーンなのに平気で下ネタを言う人もいるんです。一般の企業に置き換えて考えれば、それがいかに非常識なことかわかりますよね。
「この女は嘘つきだ」「虚言癖がある」と誹謗中傷されたことも
ーー「これって、もう社会問題だな」と思ったから、セクハラに対する法整備を実現させるために署名活動を始めたところも。
松阪 いまだにセクハラの被害を受けても、法律が定まっていないことから、戦えるようになっていないんですよ。そこをきちんと整備してもらいたいなと思って。
これまでもジェンダーギャップやハラスメント防止のための研修を行ったりはしていたのですが、SNSを乗っ取られたりしたことでネット犯罪が怖くなって、SNSを数年間やっていなかったので、声をあげられずにいました。
それでも、このままではなかなか変わらないと思い、違うアプローチをしようと署名活動を2024年2月から始めて、そのあたりから声を上げられるようにもなって。同じ年にNHKでスタートアップ業界のセクハラを取材していただきました。
ーーNHKの取材後も、誹謗中傷を受け続けていると。
松阪 「この女は嘘つきだ」とか「虚言癖がある」とか。「過去1年間にセクハラ被害を経験した女性起業家が52%」というデータや統計も出ているのでね。嘘もなにもないんですけど。
でも、思ったよりDMでなにか言われることは減って、あたたかい言葉もたくさんかけていただけるようになったので、それが支えになりましたね。これまで声を上げてきた皆様のおかげで、時代が変わってきたのかなって。ひとりひとりの活動や声の力は凄いと実感しています。