署名もオンラインの署名サイトで始めたんですけど、最初はぜんぜん集まらなかったんですよ。ビュー数は1万くらいあるんだけど、ずっと100筆ほどで止まっていて。それがNHKで取り上げられてから徐々に増えていって、いまは5000を超えて、皆様には大変感謝をしています。これからも皆様と一緒に、ハラスメントなき社会に向けて活動していきたいと思います。
セクハラ被害者が「弁護士に話しにくい」と感じる事情とは?
ーー被害者コミュニティーの「スタートアップユニオン」も立ち上げましたね。
松阪 2024年の3月から仲間と構想を練り始め、10月にプレスリリースを打って動き出しました。1対1で被害者の方からの相談を受けたり、ミーティングしたり。
被害者の方って、弁護士に話しにくかったりすることがあるんです。弁護士は証拠ありきの仕事ですし、法的なアドバイスをするのが仕事なので、どうしても「もっと証拠はないのか」となってしまいます。でも、精神的にダメージを負っている被害者からすると話すだけでも辛いこともあります。
弁護士さんもセクハラや性犯罪への知識がある人とない人の個人差があるので、人によっては相談した相手からの言葉によって、もっと傷ついてしまったり、フラッシュバックしてしまったりする場合があって。
自分と同じような被害者としか話をしたくないって人がいるんです。そういった方に、スタートアップユニオンを利用していただき、頼れる居場所になれたらなと思ってます。
セクハラ加害者がSNSで「セクハラは良くない!」と言い始めた
ーーNHKの番組やスタートアップユニオンの立ち上げで、セクハラ加害者の反応などはありますか。たとえば、「見たよ」とか連絡してきたとか。
松阪 連絡はないですね。でも、SNSで「セクハラは良くない!」なんてことを言っていました。「あなただよ、あなたのことを言ってるんだよ」って思いました。
その人は私にセクハラを指摘されたら、当時ものすごく逆ギレしてたんですけど、時代的にそう振る舞うのが得策じゃないと気がついたようで、むしろ他の企業よりも早く「ジェンダー、ジェンダー」って言ってましたね。
それを言い出したことで、良い起業家、良い企業みたいに捉えられて、仕事がうまくいったんですよ。私には口封じの圧力をかけようとしてきましたけど、本当はお礼を言って欲しいくらいです。
セクハラ加害者の中には、女性起業家の支援を行っている人もいますが、そういう側面を見せるのは一部の人にだけ。ターゲットに対しては、“顔”を変えてセクハラや性犯罪をするんです。
ーーなんだか、アレな話ですね。
松阪 スタートアップ業界って、DEIが遅れていると言われています。DEIって、Diversity、Equity、Inclusionの頭文字で、多様性、公平性、包括性って意味なんですけど、DEIに取り組むことで起業も経営もうまくいくと言われているんですよね。私にセクハラした加害者が、今ではジェンダー問題を積極的に取り扱っていることがそれを証明した事例です。
ジェンダーギャップ問題や性差別の問題の本質的な解決にはまだまだ遠いので、ハラスメントの撲滅や誰もが夢を追える社会にむけて一歩一歩取り組んでいきたいと思っています。みなさんも一緒に、社会を変えていきましょう!
撮影=山元茂樹/文藝春秋

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