その5ヶ月ほど前から転職活動を始めていたが、コロナ禍だったこともあり、書類審査を含め、約250社を受けたが不採用。そこで迅斗さんは、中学3年生の頃から20歳くらいまで更新し続けていたブログのことを思い出し、フリーランスでライターやブロガーとして生計を立てていくことを決意する。

「図書館に通っていた頃に、僕はとある本に出会い、救われました。だから『同じようにうつ病で悩んでいる人の力になりたい!』と考えたのです。これが、僕が現在運営している『じぶんぽっく』で、うつ病や発達障害の人の就活や転職などについて発信をしていこうと決めた原点です」

 しかし、フリーランスでライターやブロガーとして生計を立てていくことは、簡単ではなかった。

ADVERTISEMENT

 会社員時代に作った600万円の借金も返済中だった迅斗さん。会社を退職し、収入が激減してしまったため、当時所有していた自慢の青い車を手放さざるを得なくなってしまう。

迅斗さんが所有していた青い車 本人提供

 そのことが悔しくてたまらなかった迅斗さんは、サイトの運営とライター業、ウーバーイーツ配達員を掛け持ちし、休みなく働き続けた。

「それでも、記事を書いて誰かに感謝されることはすごく嬉しかったし、ブログやSNSを読んでコメントがいただけるのも励みになりました。それがなかったら、ここまで続けてこられなかったと思います。2021年には『うつ病からの社会復帰を支えるサービス』として、就労移行支援を行う会社3社と障害者雇用の転職エージェント1社を取材させてもらったのですが、うつ病を体験したからこそ気づいたことも多く、『貴重な経験をさせてもらえた』と今でも思っています」

 2021年は悔しいことが続き、迅斗さんは崖っぷちに立たされていた。

 複数のユーザーから、ブログやSNSで誹謗中傷されたのだ。

「ブログ仲間から、『お前はこのままだと中途半端に終わる』と言われたのが一番悔しくて、その後数ヶ月は“稼げるブログ”を模索し、お金に絡む記事を連投していました。Twitterを見れば、数万フォロワーを持つ人や本を出版している人など、僕が叶えたい夢を実現している人がたくさんいます。プライベートでは、『またあの青い車に乗りたい』『安定した生活がしたい』といった思いが日に日に強くなります。『自分は何をしているのか』『何が足りないのか』『この状態はいつまで続くのか』……頭の中はずっとモヤモヤし続けていました」

 暗闇の中を足掻き続けているうちに、迅斗さんは「燃え尽き症候群」に陥り、やる気を失ってしまった。

原点に立ち返る

 そんなある日、29歳の頃から同棲している彼女からこう言われた。

「もっと個人感のある発信のほうがいいんじゃない? 迅斗くんがしたいのは情報発信でしょ? 最近『らしくない』ものが多いよ?」

 迅斗さんはハッとした。

「衝撃でした。“稼げるブログ”を模索し、お金に絡む記事を連投したことが功を奏したのか、売上が会社員時代の給料を超え、余裕ができたからこそ『そもそも自分は何がしたいんだろう?』ということについて改めて考えました」

 半年ほどかけて出た答えは、「このブログを始めた原点」にあった。