・睡眠時間をなるべく一定に保つ

・疲れているときのサインが出たら、すぐに休む

・急拡大よりも「細く長く輝く」を心がける

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「仕事の忙しさや趣味の活動などで生活リズムがくずれると睡眠不足を招き、疲れてくるので、なるべく睡眠時間は削らないように気をつけています。僕の疲れているサインは『食欲がなくなる』『早朝に目が覚める』『飲酒量が増える』あたりになります。これらは人によって異なるかと思います」

 自分の不調にいち早く気づき、早めに手を打つことが、ダメージを深くしないために重要だということだろう。

「ハラスメントの連鎖」は止められる

 迅斗さんは母親の影響で、がむしゃらに頑張るクセが身についてしまっていたために、自分の不調に気づくことができなかった。また、困難に直面した時、母親が「逃げる」という選択を許す人ではなかったため、不調なまま居心地の悪い職場で戦い続けた結果、うつ病になってしまった。

 夫と仲が良いとはいえず、せっかく購入した分譲マンションの隣人から嫌がらせを受け、パート先でも人間関係が悪かった迅斗さんの母親は、そのストレスを子どもたちにぶつけていたと想像する。そして、体育会系でパワハラが横行している職場の上司や先輩たちは、職場のストレスを自分より立場の弱い部下や同期などにぶつけていたのだろう。いわば、“家庭内ハラスメント”を受けて育った迅斗さんは、“企業内ハラスメント”の格好の餌食となったのだ。

 迅斗さんも含め、筆者はこれまで多くの毒親育ちやハラスメントを受けてきた人、依存症の人に取材してきた。その中で、毒親もハラスメントも依存症も密接に関係していて、それらはいずれも、自分自身の過去から現在までと向き合い、長い時間をかけて真っ向から対策しないと、自分の未来はもちろん、その子どもにまで連鎖するのではないかと考えている。

「僕も、連鎖するのだと思っています。ここへ来るまで本当に大変でしたが、真っ向からの対策でかなり改善はされたと思います。当時は『対策』として意識していませんでしたが、うつ病を機に人生を見つめ直した期間は本当に苦しかったです。自分と嫌というほど向き合ったからこそ、今の自分がいると思っています。その一方で、やはり最も親しい間柄である妻に対しては、負荷がかかりすぎると怒りのコントロールがうまくできない時もあり、まだまだだと思う場面もあるので、一生かけて『自分』や『連鎖』と戦う必要があるのではと感じています」

 迅斗さんは、“家庭内ハラスメント”と“企業内ハラスメント”の被害者でありながら、自分より力の弱い妻に対して、加害者になる可能性と戦い続けている。

 このことは、連載の第1回の中村さん、第4回の中川さん、第6回の太田さんも、迅斗さんと同様に話していた。「ハラスメントの連鎖」を止めるには、自分の精神や身体を健康に保ち、怒りのコントロールができるようになるためにも、自分の取り扱い説明書を作成すること、日々更新し続けることが必要不可欠だ。

「ハラスメントの連鎖」は止められる。