――以前のインタビューでは、お父さまの教えもあったと。
笠原 親父も先の先を読むタイプで、小学生のときから実家(焼き鳥店)を手伝えって言われてたの。なにかを(客席に)持ってったら、なんかさげてこいって。そういうことをずーっと言われて育ったから、こういう性格になっちゃった。しょうがないよね。
笠原さんが今悩んでいることは…
――今後のお題の参考にさせていただきます。
笠原 うん、それに悩んでる。令和の時代に俺は合わない。
――笠原さんはものを食べられないときってあります?
笠原 ないね(力強く)。俺は食欲はあるタイプだから。それも悩みですね。
――あー、そうですか。
笠原 人間ってそういう生き物なんだなって。たとえばさ、変な話になるけど、親父やカミさんが(がんで)亡くなるというときにも、お腹は減るじゃん。人間ってそうやってできてるんだなって思いましたよ。
――それは、お腹が減る自分がせつない、みたいな感情でしょうか。
笠原 うん、そうね。
――お腹が減ること自体はいいことですよね。
笠原 うん、いいことだと思いますよ。
――「ちゃんと食ってるか?」ってお父さまから言われたことは?
笠原 言われた言われた。俺が修業時代にね、家に帰ったら「飯は?」って。
――なんて答えてたんですか?
笠原 「食べたい」って。外食するより、家に帰ったほうがただ飲みができるしさ、楽だし。
――印象的な食べ物は?
笠原 なんだろうね、お店の余りものを出してくれて、なんでもおいしかったから。
――笠原さんは「吉兆」で修業された料理人で、一方でレシピのお仕事も数えきれないほどされています。プロの技を惜しげもなく披露されて、教え方もお上手で。どういう流れでそうなったのでしょうか?
笠原 そもそも仕事の依頼がくるようになったからやるようになって、いっぱい数をこなしているうちにうまくなったんじゃないですか。あとは、どんな仕事にも共通すると思いますけど、向こうがこういうことをやって欲しいなってことを、やっているからじゃないですか。こういう絵が欲しいんだろうなって、わかっちゃうんですよ。
