引退宣言に「大女優」が言い放った言葉

――俳優を続けるのが難しくなったのは、なぜだったのでしょうか。

松永 2008年にリーマンショックが起き、スポンサーが付かなくなって、番組制作が減り始めたんです。驚いたのは、ドラマのオーディションに手応えがあったのに落ちてしまい、「誰に決まったの?」と聞いたら主役級の俳優さんだったことです。僕は主人公の脇を固めるような役柄が多かったのですが、「あの人がこんな役をやるのか」ということが続きました。ドラマの制作が減り、数少ない枠が有名俳優で埋まるようになったことに危機感を覚えました。

最初の異変は2008年の「リーマンショック」だった ©橋本篤/文藝春秋

――経済的な苦しさを感じたことはありますか?

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松永 うちの場合は、妻がうまく貯蓄をしてくれていたので助かりました。息子2人は私立の高校、大学ですが、学資保険に入っていたので学費の心配はせずに済みました。

 あまり贅沢な生活をしていなかったのがよかったのだと思います。ホリプロの先輩方に「自分の身の丈に合った仕事の仕方、生き方をしろ」と教えてもらったおかげです。

 マネージャーが頑張ってくれたおかげで仕事は続けられましたが、2020年にコロナ禍が訪れたことで2時間ドラマが全て無くなり、最後に残っていたレギュラー番組も休止しました。先輩方も「仕事が一切なくなった」と言っていましたね。「家族を守っていくために芸能界を引退しよう」と決断して、2021年3月に事務所に報告しました。

――引退について、周りの方の反応はどうでしたか?

松永 1番印象的だったのは、片平なぎささんの言葉です。お電話でお伝えしたところ、少し沈黙したあと「松永、あんた偉いね」と仰ったんです。「あんたすごい、私にはそんな度胸ない」と。これまで僕のために色々とご指導くださったのが、なぎささんでした。その言葉で、「僕は芸能界で成功はしなかったけれど、家族を守って生きるための覚悟を決めることができたんだ」と自信を持つことができました。

――芸能活動を引退するときには、何が必要なのですか?