みんな芸能人をズルズルと続けてしまう理由

松永 1番は心の準備です。一度芸能界という舞台に立つと、お客様の歓声や拍手を浴びる感動が忘れられなくなります。ファンの方から「自殺を考えていたけど、あなたのドラマを見て思い止まりました」という手紙をいただいたこともありました。

「誰かの人生を変えるような素晴らしい仕事なんだ」という満足感があるから、なかなか辞められないんです。それに引退しなければ何がきっかけで再ブレイクするか分からないから、ズルズル続けてしまうんです。

――引退後に「芸能人の就職支援事業」をしようと思ったのはなぜだったのでしょうか。

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松永 「芸能界の経験を活かせる仕事をしたいな」と考えて思いついたのが、「芸能人のセカンドキャリアに対して何かできないか」ということでした。例えばプロ野球やJリーグでは、選手が引退した後に指導者としてキャリアを活かす道を球団が用意してくれることがあります。でも芸能事務所は一切それがなく、「頑張れよ」の一言だけ。だから芸能人の第2の人生を切り拓くための事業をしたいと思ったんです。

 そんな時、息子の大学野球の応援に行くと、「野球部の学生の就職サポートをしている方が来ている」と聞きました。それが、僕が今働いているJ-SHIP(ジェイシップ)の代表の城友博さんでした。城さんは元プロ野球選手で、ご自身が引退後に苦労した経験から、引退したアスリート学生の就職サポート事業を起業しました。城さんに、「芸能人のセカンドキャリア支援」についてお話したところ、「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってくださいました。現在は、アスリート学生の就職支援を手伝いながら、新事業をやらせてもらっています。

現在のお仕事は…

――具体的には、どんな仕事をしているのですか?

松永 芸能人は収入が不安定で社会保険料を支払えないケースが多いので、福利厚生がしっかりした企業に絞って、元芸能人とのマッチングを提案しています。飲食店や不動産営業、販売業、珍しいところでは葬儀屋の司会など、人前で話をする職種が多いですね。

 最近では、幼稚園や学童保育からお問い合わせがあります。うちの紹介ではありませんが、昔ホリプロにいた工藤兄弟は、芸能界引退後に子ども達に体操を教える仕事をしているんです。元アイドルの子なら歌や踊りという特技があるので、子どもに関わる仕事が新しい活躍の場になるかもしれないですね。

 またセカンドキャリア支援以外にも、仕事が少ない芸能人にクリーンな副業を紹介する事業も広げていきたいと思っています。

元芸能人のセカンドキャリア支援。有意義な活動に見えるが、決して一筋縄ではいかない理由とは…? 続きはインタビュー後編で ©橋本篤/文藝春秋

――松永さんの事業について、芸能界からはどんな反応がありますか?

松永 先日、ホリプロの取締役の方に、「松永がこうやって活躍してくれることが最高に嬉しいよ」と言ってもらいました。ホリプロを辞めて成功している人があまりいないそうで、そう言っていただけて有難かったですね。

 ただ、仕事の少ない芸能人に副業を勧めようとすると、ある方から思いがけない反応が返ってきたことがありました。

次の記事に続く 「旦那の仕事がない、もうローンが払えない」バイトもできず離婚した有名人夫婦も…俳優→会社員に転職した男(56)が明かす「保障のない芸能界の厳しさ」

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