篠さんは92年に結婚した後も精力的に仕事をした。93年に田村正和さんの妻役で出演した「カミさんの悪口」(TBS系)は最高視聴率が23・7%、95年の「2」も同22・1%。
その頃、篠さんの心境にも変化が生じていた。『FLASH』93年3月9日号は篠さんの“CM好感度タレント”ぶりを報じているが、篠さんはこう語っている。〈結婚してね、すごく気持ちが楽になりました。片意地張ってたのがすーっと抜けたようで〉
あ、それ、やる気がなくなってきたのをうまく言い換えてる(笑)。結婚して、変わったんです。みんなに見てもらおうとかそういう気持ちにならなくなった。自分で演じながら自分でない人が演じているような、魂がそこにないような。自分でも意外でした。
なんだろう。卒業かな。次の段階に入る感覚。これからは伊集院を支えるっていうふうに、すっと切り替わってしまったんですね。
「カミさんの悪口」は、田村さんから「おめでとう」って花瓶をいただいたから、結婚していましたね。あの時はまだそうでもなかったけれど、やっぱり以前と同じではなかったと思います。
最後の「彼」は、稲垣吾郎さんが相手役でした。雨のシーンとかいくつか覚えているけれど、どんな話だったか、あまり覚えてないの。その頃、NHKのドラマのお話をいただいて迷ったけれど、それもお断りした。だから「彼」が最後になりました。
●篠さんの幼少期やいずみたく氏の内弟子時代の話、伊集院さんの“手”の色っぽさ、ノーベル賞作家ハン・ガンさんの小説を読み“別れ”について思うこと、1月の終わりに見つけた伊集院静さんの色紙など、インタビュー全文は『週刊文春WOMAN2025春号』および「週刊文春 電子版」でお読みいただけます。
しのひろこ/1948年宮城県生まれ。東北学院大学在学中にローカル番組でアシスタントを務めたのをきっかけにスカウトされ20歳で上京。68年歌手デビュー。73年ドラマ「時間ですよ」で注目される。92年に直木賞作家の伊集院静と結婚。97年以降、芸能活動を休止している。
取材・文:矢部万紀子 写真:篠さん提供、文藝春秋、橋本篤

【週刊文春WOMAN 目次】特集 40代からのキャリアと人生/篠ひろ子 女優を辞めた理由/ヤマザキマリ 母と愛猫の死。別居婚/内田也哉子×ダルビッシュ聖子/太田光 テレビでの“後悔”と“希望”
2025春号
2025年3月21日 発売
定価748円(税込)