中山道を歩いて行くと……

 その中山道、路面が遮熱舗装されているといういかにも熊谷らしい国道17号を西に向かってしばらく歩く。すると、大きな建物が正面に見えてきた。1897年創業、埼玉県でははじめての百貨店という老舗の地場百貨店・八木橋百貨店だ。

 八木橋百貨店のエントランスには手製の温度計が掲げられていて、その日の最高気温が表示される。そう、熊谷といえば、暑いのだ。毎年夏になると、熊谷はやたらと注目度が高くなる。

 ワイドショーやら何やら猛暑の日にはこぞって出かけて「熊谷、暑いです!」などと、誰もがわかりきっていることを叫ぶというパフォーマンスを繰り広げる。

ADVERTISEMENT

 ただし、パフォーマンスだけでなく実際に熊谷は本当に暑い。2018年7月23 日に記録した41・1℃は観測史上最高記録(2020年に浜松市も41・1℃を記録していまは1位タイ)。つまり日本でいちばん暑い町なのだ。だから、まあワイドショーが出かけたくなる気持ち、わからなくもない。

実は埼玉県で10本の指に入る都市「熊谷」

 八木橋百貨店と熊谷駅の間、旧中山道とJR高崎線の間には、昔ながらの商店街がいくつも連なっている。もちろんずっと絶え間なく店が続いているわけではなくて途切れ途切れなのだが、店のラインナップはなかなか個性的だ。

1897年創業、埼玉県でははじめての百貨店という老舗の地場百貨店・八木橋百貨店

 というのも、いかにも昭和の色の濃い商店があるかと思えばスナックがあったり、さらにはパブ・クラブといったオトナのお店もあったり。その合間にちょっと小洒落た居酒屋や飲食店があって、はたまた古びた喫茶店。それでいて、オフィスビルのような類いもあれば、繁華街らしく“無料案内所”の看板も。もちろんふつうの住宅だって並んでいる。

 つまりは、とにかく雑多なのだ。だいたいどの地方都市にもあるような光景といえばそうだが、オトナのお店系とそれ以外のお店はエリアがくっきりと分かれているケースが多い。

 ところが熊谷は、その辺の境目があいまいで、全体があらゆる意味でバランスの取れた繁華街。中央には道路の真ん中が緑地化されたシンボルロードもあって、コンパクトとはいえないかもしれないが、なかなか歩いていておもしろい。さすがの埼玉県北部を代表する都市なのだ。