黒いハードカバーと目にやさしいアイボリーの紙、ページを固定するためのゴムバンドが特徴のモレスキンのノートブック。シンプルなデザインとさまざまな用途に対応したバリエーションの広さから、ヨーロッパを中心に世界中でファンを持つ。日本では東京、横浜、神戸に3店舗の直営店を展開するモレスキン。CEOのクリストフ・アーシャンボウ氏が、デジタル時代における「書くこと」の意義を語った。
Text:Junko Kubodera
使い切ったノートブックにこそ価値がある
――モレスキンの歴史について教えてください。
アーシャンボウ 19世紀後半から20世紀にかけて、パリではヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、パブロ・ピカソといったアーティストやアメリカの小説家アーネスト・ヘミングウェイらが小さな黒いノートブックを使って創作活動をしていました。イギリスの紀行作家ブルース・チャトウィンは、フランス中西部にある都市トゥールの製本業者が手工業で作っていた黒いノートブックを愛用していましたが、1986年に生産が終了しました。これら芸術家や思想家に愛された伝説的なノートブックにインスピレーションを受け、1997年に蘇らせたのが、現在イタリア・ミラノに拠点を置くモレスキンです。
――アーシャンボウさんはワールドワイドな企業での経歴をお持ちですが、モレスキン社の魅力はどんな点にありますか?
アーシャンボウ モレスキンは書くことに対する強いパッションを持つブランドです。私自身、学生の頃から愛用しており、現在もビジネスやトラベルジャーナルとして使っています。モレスキンの価値はまっさらな新しいノートブックではなく、持ち主が使い切ってパンパンに膨らんだノートブックにあるのです。つまり大事なのは書かれている内容であり、その価値を伝えることがわれわれの使命ともいえる。書くことによって生まれるクリエイティビティやアイディアを共有することに注力している点にブランドの魅力を感じています。


