イギリス人と結婚、6ヶ国へ移住しながら、6人を産み育ててきたラスコットエバンス美穂さん。YouTubeチャンネル「LiaLico Channel」では、家族の日常を紹介する動画を配信し、登録者数は27.5万人超と大人気に。

 そんな彼女が50代の半ばを迎えた頃、子どもたちが次々に独立し、忙しかった子育てが終わり、心にぽっかりと穴があいたように感じる「空の巣症候群」を発症。夫婦の亀裂、更年期の心身の不調……とピンチに。

 そこからの約3年間、もがきながらも、子どもや夫との向き合い方を見つめ直し、自分自身の新しい幸せを見つけるまでの体験を綴った『もういいじゃん、私が楽しめば。 夫は英国人、6人子持ちアラカン母のエッセイ』(KADOKAWA)を上梓。今回は一部抜粋して6人の子どもの子育てについて紹介する。(全2回の1回目/続きを読む

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 結婚当初、私は30歳でしたが夫婦で大家族を夢見ていました。ハネムーンベイビーとして生まれた長男のともやを筆頭に、その翌年には次男のじゅん、5年後には三男のかい、その翌年には四男のかづが家族に加わりました。

 

 その間にダディ(夫のこと)の転勤に伴って、国をまたいだ引っ越しを6回していました。最後に双子のりあとりこを妊娠してからは、子育ての場所は日本人学校のあるバルセロナがよいと考えたため、夫はマドリッドに単身赴任し、私が6人の子どもたちをワンオペで育てることにしました。

双子誕生。ワンオペ6人子育て壮絶期の開始

 バルセロナに引っ越してからがあまりにも目まぐるしかったからか、引っ越してから翌年の双子出産までの記憶(毎日の4つのお弁当作り、夕ごはん作り、学校やサッカーなどへの送り迎え)は、断片的でぼんやりとしています。

四男かづくんの誕生

 そんな中で、双子の出産の当日の出来事だけは、今でも鮮明に覚えています。それは、人生初の帝王切開で、予定日の数週間前に手術の日程が決まりました。その日は記念すべき「兄弟4人で過ごす最後の日」ということで、私は4人の大好物の唐揚げを手術に行く前の昼にせっせと作りました。そして、「夜中からは何も食べないように」と言われていたのにもかかわらず、味見ぐらいならとのんきに一口食べて、余計なことを言わなきゃいいのに、ばか正直に看護師に伝えたのでした。

 その結果、予定されていた午後2時の手術が、まさかの午後6時に変更されてしまったのです。飲まず食わずで過ごす妊婦の4時間延長戦はまさに拷問のような時間でした。病院の待合室で待つ男の子たちも、最初は「妹ができる」と喜びに満ちていたのに、次第に「なんでそんなに待たなきゃいけないの?」という不満顔に変わっていきました。

 こうして生まれてきた2人、りあとりこは、小さい体ながら天使のように可愛らしく、その姿を見るだけで疲れも吹き飛ぶようでした。このときばかりはダディも病室に泊まり込み、授乳のときにベビーベッドからりあとりこを私に渡してくれたり、おむつを替えてくれたり、しっかりサポートしてくれました。

 産後ハイという言葉がありますが、まさにその状態だったのかもしれません。心も体もふわふわと浮かぶような数日間は、疲れていたはずなのに、まるで夢見心地。すやすやと眠る双子の顔を眺めているだけで、母として最高に幸せでした。