実店舗型の金融機関の限界

 どうしてこのような偏ったランキングになってしまうのでしょうか。背景には、実店舗型の金融機関の限界があると考えられます。

 生命保険会社が多くの営業人材を抱えているのと同様に、旧来型の銀行・証券会社には実店舗があり、その人件費を賄う必要があります。ですから、ネット証券より手数料を多めに取らないと利益が出ません。また、直接会えるわけですから、自社の関連商品を重点的に営業することもできます。一方、ネット証券では人件費を抑えられますし、もし商品ラインナップがイマイチであれば、ワンクリックで他のサイトに逃げられてしまいます。

 いずれにしても、大手の証券会社や銀行の事情からすれば、このような販売方法はまったくおかしなことではありません。ただ、個人投資家がその事情を考慮する必要はないですよね。

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 二大ネット証券であるSBI証券や楽天証券が取り扱っている投資信託の数は、2500銘柄以上と、都市銀行や旧来型の証券会社の2~5倍と多く、そのすべての投資信託で購入時の手数料が無料です。

 そして、SBI証券と楽天証券での販売金額ランキングの上位は、1年間の信託報酬が非常に安い商品ばかりです。

 ちなみに、ネット証券が倒産し、預けている資産がなくなってしまうのではないかという心配はあるかもしれません。ただ、これも心配無用です。

 実は、証券会社には、自社の資産と投資家の資産を別々に分けて管理する義務があり(「顧客資産の分別管理」)、たとえ証券会社が倒産しても資産は確実に戻ってくるようになっています。万が一、証券会社が義務を怠っても、日本投資者保護基金から1000万円まで補償されることになっています。これは1998年に当時大手証券の一角だった山一證券が倒産したことを受けて作られた仕組みになります。

 SBI証券は親会社のSBIホールディングスが上場していて大手証券に並ぶ規模に成長していますし、楽天証券は株主が楽天グループとみずほ証券です。どちらも、20年程度の歴史があり、証券口座の開設数は1000万を超え、投資資産の保護の仕組みもありますから、「ネット証券だから不安」という心配は必要ないでしょう。また双方とも、証券口座の開設数や預かり資金の残高数も、競合のネット証券と比べて非常に多く、2023年10月からは国内株式の売買手数料の無料化もスタートさせています。

 ただ、第2章で書いたように楽天証券は楽天グループ全体としての課題があり、最近はポイント還元含めSBI証券にサービスで劣後することが増えてきました。楽天証券の元気がなくなれば、競合のSBI証券は無理なサービスを提供しなくなるでしょうから、いつまでもこの2社だけを使っていれば“お得”かといえば、10年後には変わっている可能性もあります。

 後から証券会社を変更したり、複数の証券会社を併用したりすることもできますから、二大ネット証券会社を基本的には利用しつつも、5年、10年単位で有利なネット証券が登場しないか確認してもいいと思います。

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