多様な職業経験とその影響

――壇蜜さんは芸能界の仕事をされる前にいろんな仕事をしてきた経歴が結構注目されていたように思うんですね。いろんなことに挑戦してきたこともロスジェネ世代の不安からきているのでしょうか。

壇蜜 なんとか手に職をつけて、自信を持って生きることができる人になりたいっていう気持ちは強かったんです。比較的勉強が苦手で、せっかく母や父が頑張って入れてくれた大学の英米文学科っていう科でも成績が振るわなくって困ってた時に、自分で道を切り開くには私に何ができるんだろうって常に考えた結果、そういう職業を選びがちで。

 

 選びがちな職業は、今はどうかわからないですけど、当時はいわゆるちょっと理解されがたいマニアックなものだったり、世間に知られていないようなものが多かった。で、結果として収入につながることがなくて、私の持っているものとか、自信があったこととか、大切にしているものがどんどん削られていくんですよね。

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 最終的に残ったのが、解剖の仕事と水商売の仕事と、芸能事務所に入ってグラビアの仕事をするっていう三本柱でした。

――こんなお仕事あったんだって、壇蜜さんのテレビでのお話を通じて知った方って当時結構いたと思うんですね。そういう声は届いていましたか。

壇蜜 そうですね。遺体衛生保全士っていう民間の資格があって、ご遺体からの感染症を防いだり、ご遺体の修復をしたりっていう仕事があるっていうのは知らなかった方は多いと思います。

格差を広げた非正規雇用問題

――ロスジェネ世代と一緒に語られることが多いのは、非正規雇用の問題だと思うんですね。非正規という形で働く方がこの世代で増えてきて、格差が生まれたと一般的に言われていますが、非正規雇用が増えてきたことにどう感じていますか。

 

壇蜜 まず人間に「非ず」をつけないでほしいなって。「人非人」とか、「非行に走る」とか、「非正規」とか。せいぜい「非常勤」くらいですかね。ポジティブに捉えられるのは。それだって常に非ずですからね。

「非ず」という言葉を使った人の表現を受け入れて働くことはすごく辛かったです。