3/4ページ目
この記事を1ページ目から読む
現役時代、このあたりに広がっていた光景は…
現役時代、貨物専用の終着駅の名は安比奈駅といった。関東大震災後、つまり大正時代の終わり頃から営業を開始して砂利を運んだ西武安比奈線。
最初は非電化の路線で、おそらく蒸気機関車が活躍していたのだろう。が、終戦からそれほど経っていない1949年には電化路線になっている。戦後復興に伴い砂利需要が急増し、輸送力を強化したに違いない。
その当時、いまや木々の生い茂るばかりの河川敷には安比奈線の安比奈駅とそこから河原まで続くトロッコの線路が広がっていたという。
川底から採掘した砂利はトロッコに積んで運ばれて、件の工場あたりで選別をしてから列車に載せ替え、安比奈線を走って南大塚駅へ。そして西武新宿線に乗り入れて都心方面、または本川越方面へと運ばれていたのだ。
ちなみに、入間川河原のトロッコ線や安比奈駅構内での貨車入替には陸軍の鉄道連隊の貨車や機関車が使われていた。どうして西武鉄道が鉄道連隊の車両を手に入れることができたのかはよくわからない。
きっとあれこれ手を回して、使いやすそうなお古の車両を確保したのだろう。関東大震災後や終戦後は、とにかく砂利の需要が高まっていた時代であった。


