見えてきた森を抜けて廃線跡をたどっていく
そして、その先の廃線跡の行き着く先に見えてくるのは、森である。いよいよ入間川河川敷近しといったところだろうか。この小さな森の中では2本のレールは昔のレール幅そのままに置かれていて、その上を覆うように緑の木々が生い茂る。
決して列車の走ることのないレールが2本まっすぐと延び、緑のトンネルの向こうに明かりが見える。雨降りであっても、いや雨降りだからこそ、なかなか実に幻想的な廃線跡の風景だ。
列車が行き交っていた時代には、もちろんこれほどに木々がレールの真上まで茂っていたということではなかろうと思う。廃線跡だからこその景色といっていい。そして同時に現役時代がどんな様子だったのか、思いを馳せるのもまた、悪くない時間である。
そんな小さな森の中を抜けると、レールごと埋められたと思しき道路を越えて、またも森の中へと廃線跡は入ってゆく。
その先にはどうやらもう進むことはできないらしい。それまでとはまったく違い、かなり厳重なフェンスと共に入念な立ち入り禁止の文字が掲げられていた。
見ると、そこにはいかにも古そうな橋梁の跡。万にひとつ、誰かがそこに入り込んで橋が落ちてしまったら、ということなのだろう。
そして、この古びた橋の先はもう入間川の河川敷だ。八瀬大橋という入間川を渡る橋に通じる道を歩いてゆくと、その真下を潜るように廃線跡が続いているのが見える。ただ、道路が完全に廃線跡を埋めてしまっていて、さらに周囲も河川敷の木々の中へと消えている。
廃線跡が消えた先を眺めれば、「安全第一」と壁面に掲げられた工場のようなものが見える。この場所では現在も砂利の採取が行われているという。きっと安比奈線もこの工場のあたりまで続いていたのだろう。


