正式な廃止からは10年も経っていない「安比奈線」の“この先”
しかし、首都圏に近い川の砂利を採掘して運んで都市建設、という時代はいつまでも続かない。野放図に川を浚渫して砂利をさらってばかりいては水害の原因にもなりかねない。
そういうわけで、少しずつ砂利の採取量が制限されるようになり、1964年には入間川の砂利採取は原則禁止されてしまった。そうなれば、安比奈線の役割も終わりである。
ほぼ同時期に多摩川や相模川でも砂利採取が禁じられているが、そちらの砂利鉄道はそのまま通勤通学路線として残る。
ただ、まだまだ周囲の都市化も進んでいなかった安比奈線にあっては、そういうニーズもなかったのだろう。結局、運転を“休止”したまま歳月が流れることになる。
その後、安比奈駅付近に車両基地を建設する計画があったり、はたまた旅客線として復活させて沿線の宅地開発を進める計画があったりはしたようだ。
いずれも実現しないまま、2017年に正式に廃止になった。廃線後は、いったいどうなるのか。それはまだよくわからない(というか決まっていないのだろう)。もしかすると、遊歩道のようになるのかもしれない。そうなれば、緑のトンネルはなかなかの見どころになりそうだ。
ともあれ、いまから100年前に営業を開始し、関東大震災と戦後の復興に陰ながら力を尽くした砂利鉄道・西武安比奈線。もしかしたら、ぼくらの町のどこかにも、安比奈線が運んだ砂利が使われている……かもしれない。大都会・東京の礎を築いた、廃線跡なのである。
写真=鼠入昌史
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