イチローズモルトに日本酒、秩父と縁があるからこその食卓
もちろんこだわっているのは料理だけではない。秩父地方には伝統の日本酒、またベンチャーウイスキーのイチローズモルトなどの名のある酒が揃っている。乗客の多くはそうしたお酒も目当てのひとつ。
さらにサービス面も含めて満足度を高めるべく、アンケートをもとに毎月課題を見つけて改善するための会議を繰り返しているという。こうした取り組みが、運行開始から10年目を迎えても人気が落ちない、むしろ上昇している秘訣なのだろう。
ちなみに、「52席の至福」を運転する乗務員は社内から選抜された腕っこき。4000系というやや古い車両を観光列車としてリメークし使用しているが、停車・発車時にもほとんど揺れを感じさせないように運転できる運転士が選ばれているそうだ。
2016年にデビューした当初は、秩父地域の活性化という大目標を掲げていた「52席の至福」。もちろん「52席の至福」だけのおかげとは言えないが、いまでは秩父も東京都心から日帰りの観光地として人気を集めるようになった。地域の人々も、「52席の至福」を歓迎しているという。松浦さんは、「地域との関わり方が広がるチャンネルになっている」と話す。
シンガポール政府にライオンズ、コラボは続き…
そして一方では、新しい取り組みにもチャレンジしている。たとえば、2024年8月にはシンガポール政府観光局とコラボした特別運行企画「52席の至福×シンガポールトレイン」を実施し、2025年1~3月期にはシンガポール料理を提供した。こうしたコラボレーションができるのも、「52席の至福」の強みだと松浦さんは言う。
「シンガポールについては政府観光局さんからお声がけをいただきました。先方はシンガポールを知ってもらって日本から観光に来てもらいたい。こちらとしても、逆にシンガポールから秩父や西武沿線に来てもらえれば。そういうきっかけになればと思ってコラボしました」(松浦さん)
他にもこれまで新潟の銘酒・八海山とのコラボ企画、また秩父のベンチャーウイスキーとコラボし、乗車した人全員にイチローズモルトをプレゼントするという大盤振る舞いの企画も実施している。
「いまではもうプレミアが付いていますからね。おひとり5万5000円と普段と比べるとだいぶ高いお値段だったのですが、喜んでいただきました。
また、昨年12月には西武ライオンズとのコラボもやっています。2年連続で西川愛也選手にご乗車いただいて、ルートもちょっと変わっていて池袋発で池袋着。西川選手と一緒に写真を撮ったりお話をしたり、ファンミーティングのようで楽しい空間になりました」(松浦さん)
