岸壁に到着した段階では、Aさんは生存していた

 この起訴によって、事件の概要がより明らかになった。つまり殺害については母親のBさん、長男のCくん、長女のDちゃん、父親のAさんの順番で行われており、Aさんについては、岸壁に到着した段階では生存していたが、それから海中に投棄されて死亡したということがわかる。

 また、まずA家からAさんの車で運び出されたのはCくんの遺体のみで、彼が先に岸壁から遺棄されていた。それから犯人の3人は再びA家に戻ると、まだ生存しているAさんとともに、BさんとDちゃんの遺体を車に積んで同じ岸壁に戻り、そこで最初にBさんの遺体を遺棄。続いてAさんと、ダンベルを介して手錠で繋いだCちゃんの遺体を、同時に海中に投じたことが判明した。

 この起訴を受け、日本に身柄がある魏の、強盗殺人などについての初公判は、04年3月23日に福岡地裁で開かれることになった。

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現在のA家遺体遺棄現場(24年撮影)

アクリル板が8枚並べられ、異様な雰囲気だった初公判

 魏は、当初の逮捕容疑である、知人女性を殴った傷害罪のほか、携帯電話を他人になりすまして契約した詐欺罪や窃盗罪、強盗罪など4件の余罪で、すでに福岡地裁において公判中だったが、同日からの裁判は、裁判官3人の合議で行われるようになる。

 初公判を傍聴した司法担当記者は言う。

「法廷内は傍聴席と被告人席の間に、高さ約1.8m、幅約1mの透明なアクリル板が8枚並べられるという厳戒態勢で、異様な雰囲気でした。特別傍聴席にはBさんの父親がいて、一家4人の写真を膝に乗せていました。午前10時に出廷した魏は黒いジャージ姿。かなり華奢な体型で、緊張しているのか、顔面は蒼白といえるくらい白く、被告人席では、俯いていることが多かった」

A家会葬御礼

 検察官による起訴状の朗読が行われ、その後の罪状認否になると、起訴事実について魏はほぼ認めたが、一部については否認することもあったという。同記者は明かす。

「強盗殺人罪についての認否を裁判官から尋ねられた際、魏は『いくつか知らないところがあります』と切り出して、Bさんの顔を浴槽に浸けたことは認めましたが、『最終的にBさんが死んだ理由はわからない』と語っています。またCくんについては、『枕に顔を押しつけたが、途中で交代して、死ぬところは見ていません』と説明。さらに、Dちゃんの殺害に関しては、『自分はかかわっていない』と、関与を否定しました」