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旅行の楽しみを左右する、街歩きの極意13カ条

プロが教える「旅の新常識」

2018/06/21
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(5)歩く場合は順光になるように

 これまでの連載でも、乗り物に乗る場合は車窓から見える景色が順光になるようにと述べてきたが、徒歩の場合もそれは変わらない。ちょっとしたスナップ写真も綺麗にとれるし、写真をとらなくても逆光に邪魔されずに景色を堪能することができる。さらに建物の影となって直射日光をあまり浴びずにすむというメリットもある。じっくりみたい通りが南北にのびている場合は、南から北にむけて歩くほうがよい。もちろん順光だからだ(南半球の場合はその逆となる)。

(6)あえて蛇行した道を選ぶ

 地図上でまっすぐの道と蛇行した道があれば、蛇行した道のほうが町歩きをして面白いことが多い。後者は近代以前から街が形成されていた可能性が高いからだ。また、一般的にいって自動車交通の多い表通りよりも裏通りのほうが人々の生活の実態がよく把握できる。ただし、買い物が好きな人の場合、表通りのほうが興味深いかもしれないが……。

 グーグルマップの航空写真が見られるなら、植木が多いところを選ぶという方法もある。植木がある宅地は全体的に古くからそこにある住宅であることが多いからだ。

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グーグルのストリートビュー(https://www.google.co.jp/intl/ja/streetview/)を利用して、あらかじめ街歩きのイメージトレーニングをすることも可能だ。ただし、やりすぎると現地にいってからの感動が薄れるおそれもある。

(7)黄昏時は高台へ

 NHKに『世界ふれあい街歩き』という紀行番組がある。この番組の定番は最後の締めに高台での夕焼けをもってくる。これは実際にやってみても、たしかに1日の観光の締めとしてサマになる。そのためには、最初からラストを高台にし、なおかつ日没前後になるルート設定を考えておく必要がある。

 かつて『地球の歩き方』では、観光のスタートを高台や塔で始めることで町全体が把握できると推奨していたが、個人的にはその効用を感じたことはあまりない。もちろん遠回りしないですむのであればそのほうがよいとは思うが。

(8)日の出・日の入りの時刻をチェック

 特に秋から春にかけての欧米を旅行する際には、かなり早い時刻に日が沈んでしまう。そのため、日没時刻から逆算して街歩きのスケジュールやルートを考える必要がある。治安がよくない都市でも、日没時刻は重要な情報である。

(9)宿は旧市街にとるべし

 昨今、世界中の観光名所はどこにいっても人だらけである。これを避けるには人があまり動かない時間帯に行動するほかはない。大観光地も夕方から朝にかけては日中の喧噪がうそのように静かなことが多い。そのなかでも特におすすめなのは夜があけたばかりの時刻。ヨーロッパの旧市街の建築物などは、周囲が明るくなれば観光できる。

 とはいうものの、朝早い時間にホテルからあまり移動したくはない。そこで、旧市街に宿をとってしまえれば、朝の散歩や、ちょっとした用事のついでに町の雰囲気を堪能することができる。

 それ以外にも、旧市街の便利な場所にホテルをとっていれば、かさばる買い物をいったん部屋に置いたり、夏場ならいったんホテルにもどりシャワーを浴びたり昼寝をしたりすることもできる。これらのメリットは、旧市街のホテルが新市街のホテルとくらべて多少ファシリティが劣っていたり、部屋が狭かったりしても、それをカバーするにあまりある。