完全オリジナルのトレーニングメニュー
南谷さんと出会ったのは、クローザーに転向した2000年オフ、肩のクリーニング手術を受けた後、直感的にリハビリを滅茶苦茶頑張らないと野球人生が終わるような気がして、阪堺病院を訪ねたのがきっかけだった。
それからは、試合と試合の合間に横浜から新幹線と南海本線を乗り継いで堺市まで通い、大阪遠征はもちろんのこと広島遠征の際にも休みを利用して来てもらい、外部施設でのトレーニングを細かくチェックしてもらった。
いざトレーニングが始まると、最低でも1時間、長い日は2時間以上も集中して2人でトレーニングルームに籠ることが当たり前になっていた。メニューは大きく分けて、(1)上半身ウエイトとランニング、(2)下半身ウエイトとランニング、(3)肩のインナーとコアとランニング。この3パターンの組み合わせを1日おきに、3勤1休で行う。
シーズン中とキャンプ中はチームランニングがあるので絶妙なバランスを取りつつ、シーズンオフはウエイトの重量やレップ数(反復回数)などのボリュームを上げ、私専用のハードな完全オリジナルメニューを作ってくれた。今では珍しくないが、南谷さんは私のいわゆるパーソナルトレーナーだった。
筋肉博士・石井直方さんの本で筋肉を猛勉強
南谷さんとの出会いは、筋肉博士と言われる石井直方さん(東京大学名誉教授)の本との出会いでもあった。
南谷さんから「あの人の本は勉強になる」と薦められたが、同時に「あんまり勉強し過ぎるな」とも冗談半分に言われた。それから石井教授の本を読み漁った。
どうすれば優れた投手になれるか、どうすれば投手として優れた身体を手に入れられるか。
それらはなぜ私がメジャーで球が速くなったのかを解明するために、欠かせない指針にもなっていった。
筋肉に関する勉強はどこでもできる。移動中や風呂などいろんな所で石井教授の本を読んでいたため、特に読み込んだ黄色い本(『石井直方の筋肉の科学』)の表紙はボロボロになっていた。
ここで前提として伝えておきたい。トレーニングの研究は日進月歩、当時私が学んだ時と今とでは違うこともある。筋肉の学びを何年も休んでいたが、今回執筆するにあたり『石井直方の筋肉の科学』の最新版(『石井直方のさらに深い!筋肉の科学2.0』)に目を通してみた。やはり当時とは違っているところがあるし、より細分化されているようにも思う。
この『石井直方のさらに深い!筋肉の科学2.0』は、選手にも指導者にも一読をお薦めしたい。難しい部分があるのも事実だが、読めばひらめきやヒントがたくさんあるはずだ。

