こういったやり方が可能なのは、キャバクラやホストクラブなどの水商売業界においては、今でも現金取引が多いためである。顧客側の支払いだけではなく、従業員への給与、酒屋からの仕入れなども、現金で直接やり取りするケースは多い。
また、キャバクラやホストクラブは、普段から高額なシャンパンやボトルが飛び交っている場だ。特に歌舞伎町は、一人の顧客が一度に1000万円を支払ったとしても、それほど違和感を覚えられることがないような、およそ一般的な感覚とは異なる世界でもある。そこに特殊詐欺や強盗によって得た大量の現金を持ち込んだとしても、たしかに目立つことはない。
そこで、組織犯罪グループの一部は、キャバクラやホストクラブの実質的なオーナーとして店を運営したり、関係性の深い店を介させたりすることで、犯罪収益をマネーロンダリングする流れを作る。
「ぼったくりバー」の真の目的
かつて、実際に歌舞伎町でぼったくりキャバクラを運営する半グレ集団に関わっていた男が明かす。
「我々がやっていたキャバクラ店には二つの目的がありました。一つは、簡単に売り上げを作るためのぼったくりです。メニュー表に小さな文字で高いサービス料を記載したり、女の子に高額なドリンクを勝手にどんどん頼ませたりして、一人あたり30~50万円の請求をするやり方です。
客の半分くらいは警察に行くと言いだすので、一緒に歌舞伎町の交番まで歩いて行くわけですが、当時は警察も民事不介入ということで、交番の前で話し合って半額だけ払うことで合意するケースが多かったです。当然、こっちは半額になることを見越してぼったくってるわけなので、半分取れたらオッケーって感じでした」
歌舞伎町においては2015年頃から、キャバクラやガールズバーなどにおけるぼったくり被害が急増。歌舞伎町交番の前には、ぼったくられた客と店側の従業員が何組も並んでいる光景が見られるようになった。