犯罪収益が「キャバクラの売り上げ」に変身

事態を問題視した警察は、ぼったくり店への家宅捜索をたびたび実施。現在においては、ぼったくり被害の被害件数も減少傾向にあるようだ。

元半グレの男が続ける。

「店のもう一つの目的は、グループが特殊詐欺などで得た違法なカネを資金洗浄することにありました。やり方は単純で、毎日架空の売り上げを作って、そのカネを店の銀行口座に現金で入れるだけです。

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やっぱり大量の現金を保管するのは怖いので、税金払ってでも銀行に入れておきたいってのが我々のグループの考え方でした。悪いことしていて何ですけど、資金洗浄したカネで合法的なビジネスに移行したかったので」

その後、このグループは警察に摘発され、男も有罪判決を受けたという。

この男が歌舞伎町で活動していた時期に、警視庁で組織犯罪対策に従事していた警察OBの一人が危惧する。

「ぼったくりのキャバクラや風俗店などが広まった時期と、繁華街で活動する組織犯罪グループが、暴力団から半グレに移り変わったタイミングは重なっている。その流れの中で、より組織実態が不透明なトクリュウが繁華街の主役となってきたのが現在だ。テクノロジーだけでなく、様々な知識に長けた者たちが台頭してきたことで、組織の実態もカネの流れもますます見えにくくなっている」

櫻井 裕一(さくらい・ゆういち)
元警視庁警視・危機管理専門家
1977年に警視庁入庁後、一貫して組織犯罪対策に従事。反社会的勢力、外国人犯罪集団、違法薬物犯罪集団等、組織的に行われる数々の犯罪現場で捜査の指揮を執る。新宿署、渋谷署で組織犯罪対策課の課長も経験。2018年、警視庁組織犯罪対策部第四課にて警視をもって退官。2020年にサイバーセキュリティ会社Steam Research&Consultingを設立、代表取締役CEOに。
高野 聖玄(たかの・せいげん)
サイバーセキュリティ専門家
1980年生まれ。ITエンジニア、編集記者等を経て、2016年から2021年までサイバーセキュリティ企業スプラウトの代表取締役。2022年よりリスクコントロール会社、STeam Research & Consulting(https://www.steamrc.jp/)の取締役COO。著書に『匿名犯罪者 闇バイト、トクリュウ、サイバー攻撃』(2025年、中公新書ラクレ)、『闇(ダーク)ウェブ』(共著、2016年、文藝春秋)、『フェイクウェブ』(2019年、文藝春秋)。
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