ここから他のメーカーでもステンレス車体が採用され、全国に普及していく。その後、国鉄はJR各社に分割され、東急車両製造は東急グループの事業再編によって車輌製造部門をJR東日本に譲渡した。JR東日本は車両製造部門の新津車両製作所を分社化し、東急車輛の事業と合わせて総合車両製作所を発足させたのだ。

JR東日本の新津車両製作所(現・総合車両製作所新津事業所)(筆者撮影)

ルイ・ヴィトンが巨大ブランドになれた理由は…

 総合車両製作所以外の会社も軽量ステンレス車体を作れるようにはなったが、総合車両製作所には前身の東急車輛がステンレス車体のさきがけだというプライドがある。そこで、総合車両製作所製を強くアピールするブランドが必要だ。とくに、海外の鉄道会社から受注するときに、ひとことで品質を説明できるブランドが必要だった。

 ルイ・ヴィトンが巨大ブランドになれた理由は、当時の旅行鞄になかった「防水性」「積み重ねしやすい直方体」「堅牢な鍵」というアピールポイントだった。ルイ・ヴィトンの鞄はまず実用性で流行し、模造品が現れたことへの対策として独自のデザインが施されたことでファッションブランドに変貌していくことになる。

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 2013年に発行された「総合車両製作所技報 第2号」によると、sustinaの開発目標は「車体軽量化」「外観の向上」「構体水密性の強化」「ぎ内装方法の改善」だった。板厚を薄くして軽量化しつつ、骨材で強度を保った。外観の向上としては外板を重ねるスポット溶接から、外板を重ねないレーザー溶接に変更。ただし構体強度を担う接合部はスポット溶接で構体水密性を強化する。

総合車両製作所が「InnoTrans2012」に展示した「sustina」のイメージとロゴマーク(出典 総合車両製作所プレスリリースより)

 内装品の取り付け方法も見なおされ、屋根構体天井部にカーテンレール状の吊溝を取り付けるほか、骨組みにフローティングボルト・ナットを仕込んでおき、取り付け時の穴開け作業をなくした。車体強化のために、ロングシートの端の袖仕切りとタテの握り棒、枕木方向の吊り手取り付け棒を一体化して、ロールバー構造としている。

 このほか、袖仕切りの合わせガラス化、人間工学を採用した吊り手形状など改良点は数多い。内装品の取り付けの簡略化はリサイクル作業の簡素化につながり、材料の再利用が容易になることで持続性を担保する。これをひとまとめにするキーワードが「sustina」というわけだ。ステンレス車体の最新技術の詰め合わせですよ、という意味になる。