「義足を履いているんだから、目立つことをしたい」モデルを目指すようになった理由

――現在はモデルとして活躍されていますが、もともと芸能の仕事に興味があったのでしょうか?

柊子 義足をつけるまでは、モデルのような人前に出る仕事には興味がなかったんですよ。でも、なんどもお話ししているように、義足ってすごくかっこいいんです。そんなかっこいい義足を履いているんだから、「目立つことをしたい」と思うようになって。

――「目立つ」という意味ではいろいろな方法があると思いますが、なぜモデルに?

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柊子 義足のかっこよさ、美しさを発信したいと思うようになって。自分に何ができるか考えたときに、憧れのGIMICOさんの影響もあって「モデルだ!」と思ったんです。

 もちろん、モデル以外にも方法はあったと思います。たとえば、スポーツをするとか。実際に、義足をつけるようになってから「スポーツはしないの?」と言われることもあったんですけど、私はスポーツが好きでも得意でもないんですよね。

 

――自分にできる発信方法のひとつがモデル業だったと。実際にモデルになるまでの経緯を教えてください。

柊子 今所属している障がい者・難病者専門の芸能プロダクション「ココダイバーシティ・エンターテイメント」が、モデルのオーディションを開催するというニュースを見かけて、応募したんです。そこで合格して、2018年からモデルとして活動を始めました。

東京オリンピック・パラリンピックでもモデルとして活躍

――2020年には、モデルとして大きな転機がありましたよね。

柊子 はい。東京オリンピック・パラリンピック日本代表選手団公式服装のモデルとして、記者発表の場に登壇して……!

 モデルになったばかりの頃は、こんな世界規模のお仕事をするなんて想像もしていなかったので、びっくりしましたね。

 そして、2021年の東京パラリンピックではプラカードベアラーを務めたり、オープニングムービーにも出演させていただいて。その後も、ヒューレットパッカードやナイキなど、大手企業のCMにも採用していただきました。

 

――急速に変化していく状況を、今西さんご自身はどう感じていましたか?

柊子 モデルになるなんて考えたこともなかったところから、突然モデルデビューをして、さらにパラリンピックへの参加といった信じられないようなお仕事をいただいて。その分、レッスンは過酷でしたが、自分がやりたいと思ったことに心置きなく挑戦できるのは、楽しかったし嬉しかったです。

 実は、モデルを始めたばかりの頃は、「義足をつけた私が目立つことをすると、快く思わない人もいるかもしれない」と、不安な気持ちもあったんです。でも実際にやってみたら、義足も含めて、私自身を肯定してくれる方がすごく多くて。

 足を切断したことも、義足にしたことも、まったく後悔していません。それでも、うまく言葉にはできないのですが、不安になる瞬間はあって。そんなときに、私の選択を肯定してくれるような声を聞けることは、すごく心強いんです。そういった意味でも、私はこの仕事をして本当によかったな、と思っています。