先天性四肢障害で、生まれつき右手首から先がないギタリストのLisa13(29)。
東京パラリンピックの閉会式のステージに立って注目された彼女に、演奏の際に用いる「義手ピック」製作の裏側、ギター専攻のある高校での日々、身体の部位を欠損した女性たちのいる「欠損バー」で働いてた頃の様子などについて、話を聞いた。(全3回の2回目/3回目に続く)
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父親の発案で「義手ピック」が誕生
――義手ピックの製作は、お父さんが担当されていると。義手ピックを作ろうと言い出したのは。
Lisa13(以下、Lisa) 父です。右腕にはめた胃薬の箱で弾いてるのを見て、「もうちょっとカッコいいの作らない?」って。
まず、ピックを買ってきて、両親と私の3人で「こんな感じか。いや、ちょっと違うか」なんて言いながら、ギターの弦とピックの当たる角度を研究して。
それで、アクリル板をベースにした1代目が出来上がったけど、いろいろ弾いてるうちに「ピックの当たる角度、まだアレだな」とか「見た目、もうすこし可愛くしたいな」とか、いろいろ気になるところが出てくるんですよね。
――そのつど、改良を重ねていったと。
Lisa 我が家は、とにかくコミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーションって感じで、ちっちゃな頃から毎日「こういうことがあった」って家族で話し合うんですよ。
その延長で義手ピックのことも家族共通の話題になって、ベルクロで留めるようにしたり、ピックを付けた板をリストバンドに挟んでみたり、スポンジでピックを挟んでみたりって、試行錯誤を続けていって。
高校入学のときに、金属とレザーを使った現在の形になったんです。高校がギター専攻のある学校だったので、そうなるとビジュアルのいいものを持っていきたいじゃないですか。なので、金属とレザーを使おうってことになって、おまけにしっくりきましたね。
3Dプリンターで義手ピックを製作しない理由
――素材はホームセンターに置いてある入手しやすいものだけど、シンデレラフィットに到達するまでの工程は大変なわけですね。
Lisa 金属の板を材料にしてるので、サンダーやドリルで加工しないといけませんしね。あと、レザーは動物愛護団体の方からチェックが入るので、ちゃんとフェイクレザーを使って。そういうところも考えてますしね。
――動物愛護団体の方に言われますか。
Lisa 言われます。DMで「それ、なんの革なの?」みたいな。海外のフォロワーの方にも聞かれますね。