「欠損バー」では欠損が原因で就職できなかった女性も働いていて…
――なぜ「あ、ごめんなさい……」という気持ちになったのですか。
Lisa 「どんな世界なのか覗いてみたい」とか「ファンと会える場所にしたかった」とか、私が欠損バーで働いた動機って軽いんですよ。でも、他の子たちは「自分の居場所が見つけられた」とか「ここでナンバーワンになる」といった思いで一生懸命に働いてたんです。
そういうところへ、ちゃらんぽらんな私が入ってきて「ごめんなさい」と。しかも、2年くらいしかお店にいなかったし、しょっちゅう出ていたわけでもないからレアキャラみたいなもんだったし。
でも、みんなすごい優しくて「Lisaちゃん、Lisaちゃん」ってフレンドリーに接してくれて。「ごめんなさい」から「ありがとうね」という気持ちになって。
――他の女性たちの経験も、あまりにも自分とは違った。
Lisa 障害に対する捉え方も違うというのもあったけど、ヘビーな子は、ほんとにヘビーで。普通に就職したかったけど、欠損が原因で採用してもらえなかったとか。
私は就職なんてまったく考えていなかったから、そういうことがポピュラーな出来事として起きている世界があることに驚きましたね。「ああ、社会ってそうなのかあ」って。
「右手がないの、かわいいね」欠損フェチのお客さんとの交流
――欠損バーの客層というのは。
Lisa 義肢装具士の方がお客さんで来たりしましたけど、欠損フェチの方が多かったですね。女の子たちに「右手がないの、かわいいね」とか「義足って、いいよね」みたいな感じ。
――欠損フェチの方を見て、どう感じましたか。
Lisa いや、とくになにも。というか、私はなにも言えないですね。マリリン・マンソンを「かわいい」と思えちゃう人なので。好きなものって、人それぞれじゃないですか。
――他の女性たちは、どんな様子でした?
Lisa みんな「喜んで!」って感じでしたよ。やっぱり、うれしいと思いますよ。後天性の欠損の子だったら、元々あった部位がなくなってる状態なんだけど、そうなった姿を「かわいい」と言って肯定してくれるのはうれしいと思う。
――たとえば、客から「欠損部位の写真を撮らせて」みたいなことは。
Lisa 他の子たちは、あるみたいです。「ねえ、その写真でなんかするの?」って聞きたくなりますけど。ほんと、私はそういうことを一切言われたことがなくて、悩み相談を受けることが多かったですね。
中年男性から若い女の子まで、幅広く相談されて。「私も義手ピック作りたいんですけど、どうやって作ればいいですか」っていうものから人生相談的なものまで、いろいろと。
――そのへんは、Lisaさんのキャラクターが影響しているんでしょうね。
Lisa してると思います。欠損バーの女の子たちって、清楚で可憐な子ばっかりなんですよ。そのうえで欠損というものを抱えているので、かよわさみたいなものが漂っているというか。それが「かわいい」的な気持ちを呼び起こして、欠損バーに通うって人もいるんじゃないですかね。
写真=山元茂樹/文藝春秋