――周りに家族がいるときにですか?
白井 「それを人に見られたら恥ずかしい」ということが理解できなかったようです。母が泣きながら片づけている景色をよく覚えています。
――お兄さんは難治性のてんかんでもあったのですよね。
白井 てんかんの発作が起きると、いきなり全身の筋肉が硬直して意識を失って倒れてしまいます。食事中でもお風呂のときでも、いつ起きるかわからず、床に頭を打ちつけてしまうこともあって、子どもの頃は発作を見るのが怖かったです。
――食事中だと、熱いものや割れる食器など危ないですよね。
白井 そうですね。お皿に顔をつっこんでしまって、お皿に載っているものがひっくり返ったり、食器が割れてしまったりすることも何度もありました。体のコントロールもできないので、同時に失禁したりすることもありました。
――とても落ち着いて食事ができなさそうです。
白井 発作が起きると母と祖母が介助をしていました。まずは窒息しないよう、口のものを取り除き、兄を寝かせてから食卓の片付けをしていました。失禁したときは着替えも必要です。
――白井さんが手伝わされることはあったのですか?
白井 兄のオナニーの片付けも、てんかんの発作の介助も、手伝うように言われたことはないです。それでもリビングにいたくなくて、さっさと自分の分を食べ終えて部屋にこもったりテレビを見ていました。
「脱いだら出てくるんじゃない?」とからかわれ全裸に…
――お兄さんは障害を負ってから、特別支援学校などに転校したのですか?
白井 支援学級が併設されている学校だったので転校はせず2年間は同じ学校に通っていましたが、あの時期は本当に嫌でしたね。イベントで兄だけみんなと同じことができなかったり、突然歌い出したり、意味のない言葉を大きな声で発したり。他の子に兄がからかわれているのを見るのも恥ずかしくて。兄がみんなの目の前で服を脱ぎ始めちゃったこともありました。
――どういう状況でしょうか。
白井 2人で一緒に近所にある習字教室に通っていたんですが、月謝を先生に渡すときに、兄が「ない!」と騒ぎはじめたんです。最初は周りの子も「ポケットは?」と一緒に探してくれていたんですが、誰かが「脱いだら出てくるんじゃない?」とからかったら、それを真に受けて本当に全部脱いでしまって……。笑い者になっている兄と同じ場所にいたくなかったですね。
――助けよう、という気持ちにはならなかった?

