――学校に行きたくなかったのはなぜでしょうか?
白井 父が兄を何度も強く叩いたり、家で落ち着いて食事ができない状況で、やはり精神的に追い詰められていたんだと思います。
でも家から外に出ると、世間では「障害者には優しくしましょう」「障害者がいると家族の絆が深まる」といった情報が溢れている。そんな中で、自分の家で実際に起きていることを学校で話せるわけがないですよね。
家でも学校でも本当の自分を出せない。どこにも安心できる居場所がなくて、自分の殻にこもりたくなって、学校にも行きたくなかったのだと思います。
――中学でもその状況が続いた?
白井 人との関わりを避けていたので友達もいなくて、自分は「ダメな人間なんだ」と自虐的になっていました。
当時は気が弱かったので、部活の先輩たちが怖くて部活や学校に行きたくなくなりました。その話を家でしたことは一度もありませんが……。
親に話すことではないと思っていたし、親も「学校に行ってるならいい」という感じで、それ以上何か聞いてきたりすることはなかったです。
「その頃はまだ、『自分の家庭がおかしい』という感覚はなかったんです」
――高校は寮付きの学校を選んだんですよね。それは実家を離れるためですか?
白井 実はその頃はまだ、「自分の家庭がおかしい」という感覚はなかったんです。自分の家しか知らないので、おかしいかどうかもわからなくて。それでも「ここではないどこか別の場所」へ行きたい気持ちはあって、寮のある学校を選びました。
進路も親に相談することもなく、自分で調べて「こうするから」と伝えて、両親も特に何も言いませんでした。
――「実家にいてほしい」とは言われなかった?
白井 それはなかったですね。小さい頃から僕と兄がしょっちゅうケンカをして仲が悪いのは明らかだったし、兄の世話は母の仕事で、僕に世話をさせるのは適切ではないという感覚が両親にあったのだと思います。
一度母から「親族の中には『将来あなたがお兄ちゃんの面倒を見るんでしょ』と言ってくる人がいると思うけど、私はそう思ってないからね」と言われたのを覚えています。
――高校で家を離れてみてどうでしたか?

