和見 まわりからの目線ですね。あとは自分で自分が嫌になってきます。自己嫌悪です。40歳超えてハゲたら「まあええやん」って思えますけど、まだ当時学生だったんで。
だんだん使う育毛剤のグレードも上がっていくんですよね。最初は1本2000~3000円のトニック系のが、だんだん5000~6000円する本気のやつになって。社会人になってからは月3万円くらいの薄毛治療薬を飲んでいました。社会人2年目で結婚したんですけれど、奥さんがなんとか家計をやりくりしてくれて。
ストレスフルな仕事のせいでハゲがさらに進行…
──お仕事は何をされていたんですか。
和見 経理系のソフトを販売する会社で、システムエンジニアをしていました。プログラムを組んだり、お客さんに「システムを導入したらこう変わります」と提案するコンサルタントみたいな役割をしたりしていましたね。
──ストレスが多そう……。
和見 そうですね。営業から引き継いだお客さんからよくよく話を聞くと、うちのシステムを導入しない方が効率がよかったりするんですよ。それで、うちのシステムが本当にいいものなのか疑問が出てきて。ストレスでどんどんハゲも悪化するし、これはあかんなと思って、お客さんに正直に言い始めたんですよ。「やめたほうがいいんちゃいますか?」って。
そしたら当時の上司に呼び出されて「和見くんと一緒だと全然仕事決まらんねんけど」って文句を言われるようになって。
──なるほど……。
和見 とはいえ仕事は取らないといけない。それがだんだんしんどくなってきて。毎日、最寄駅まで歩く途中に「誰か車でひき殺してくれんかな」と思ってました。「僕が死んだら住宅ローンもチャラになるし、奥さんと娘2人でも何とかいけるんちゃう」って。
──それはつらかったですね……。
35歳で会社を退職→アロマインストラクターに
和見 その時、奥さんがアロマセラピストの資格を取って、自宅の一室をサロンスペースに変えて仕事を始めたんです。
そういう好きな仕事をしている奥さんがうらやましくなって。生活のために嫌な仕事を続ける自分が余計にむなしいというか「何してんねんやろ」って思うようになったんです。それで、アロマインストラクターという結構難しい資格があるんですけど、必死に勉強して一発合格して、35歳の時に会社を退職しました。
──すごいですね!
和見 ただ、自宅で妻と開業したんですが、最初は僕にはほとんどお客さんがつかなくて、2年くらい妻の収入だけで暮らしていました。僕が主夫として家事や育児を担当するようになって、娘の授業参観やPTAも全部、僕が参加していました。
奥さんの仕事が終わったら「働かざる者食うべからずです」って言いながら、僕が毎日奥さんをマッサージしてました。その時に、お金稼げてないってこんな気持ちになるんやなって。ハゲとは別の意味で、自分に全然自信がなくなってしまって。
──夫婦どちらが稼いでもいいように思いますが……。

