「アレンジ牛丼」という強みがアダに?

「コメ」「牛肉」という、牛丼にとって最も大事な食材の急騰や安定供給の危機が各チェーンを襲っているわけだが、すき家に限っていえばさらなる懸念がある。

「牛丼メニュー」への依存度の高さだ。

 牛丼の競合他社を見ると、吉野家は近年「唐揚げ」を第2の柱に位置付けて積極的にメニューへ取り入れている。ホールディングス全体でみれば中小ラーメンチェーンを意欲的に買収して「ラーメン」を第3の柱にしようともしている。「牛丼一本足」ではない事業の多角化をはかっているわけだ。

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 2024年はダチョウ肉を使った「オーストリッチ丼」のテスト販売も話題を呼んだ。吉野家はダチョウ農場も持ち、長期的なスパンでダチョウも「新しい柱」にすることを明かしている。

吉野家が期間限定で販売した「オーストリッチ丼」(吉野家公式HPより引用)

 松屋はどうか。こちらもメニューは多角的で、スローガンに掲げる「みんなの食卓でありたい」を体現するかのごとく、牛丼以外のメニューが充実している。ジョージアの「シュクメルリ」など、各国の郷土料理とコラボしたメニューも、SNSでよく話題になる。最近はグループの「松のや」「マイカリー食堂」との複合型店舗も積極的に出店を重ねており、吉野家と同じく「牛丼一本足」でない事業構造を模索中だ。

 すき家に話を戻そう。メニューを見ると、全商品のうち半分ほどが「牛丼」や「牛カルビ丼」関連のメニューである。もちろん他のメニューもないわけではないが、他チェーンと比較すると存在感は薄い。

 すき家は郊外ファミリー向けとしてさまざまにアレンジした牛丼が人気で強みの一つだったが、それは逆に弱みにもなる。相対的に見ると、牛丼への依存度が高く、価格高騰の煽りを受けやすい、ともいえるのだ。