吉原の女郎屋では、原則「白い飯」つまり、精米した米を食べました。そのため田舎の農家で、精米した白い米を食べられなかった子どもに、女衒(ぜげん)が吉原に連れてくるとき、「吉原に行けば、白い飯が腹いっぱい食べられる」と言って誘ったのです。

正午ごろに昼営業の準備、江戸見物の客が遊女の姿を見て回る

真昼九ツ(正午)

昼九ツ(正午)が近づくと、女郎たちは昼見世の支度を始めます。化粧や乱れている髪の直し、衣装を着て、いつでも張見世に出られるように支度をします。

ただし、昼見世の場合、呼出しの花魁は特別な予約でもない限り客の相手はしないので、しごき帯を結んだだけという気楽な姿で過ごします。

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女郎たちが張見世の中に座ると、江戸に出て来たばかりの勤番侍や、田舎から江戸見物に出て来たような客が多いので、好奇の目で各見世を見て廻るばかりで、あまりいい客になってくれません。

客の付かなかった女郎を「お茶を挽(ひ)く」とも言いますが、この時代にはそんなことはせず、せっせと客に来訪を促す手紙を書きます。電話やメールなどの連絡手段のない時代唯一の通信手段だったのです。

手紙を送って客に「俺の女」と思わせる女郎の手練手管

昨夜来た客には、昨夜の礼、話足りなかったこと、また会いたい、そして近いうちに来てほしい、などを書きます。

昨夜のぬくもりが忘れられないうちにこうした手紙が届くと、客は早く行こうという気になるのです。

馴染みになった客には、風邪など引いていないかなどの心遣いを書きます。数日会ってないのにもう長く会っていないような気がする。客が好きだという料理も用意してあるので、早く食べに来てほしい。

客の好みも把握して、女房気取りの言葉も出て、客に「俺の女」という錯覚を起こさせます。

久しく遠のいている客には、体調への気遣いなど、客を心配している言葉を並べたうえで、自分がどれだけ会いたく思っているかをつづり、最後に、今度一緒に桜が見たいとか、玉菊灯籠が見たいなど、イベントがらみで誘います。