床入りの前に大賑わいの宴会、妓楼は宴会が続くよう盛り上げる

宵五ツ(午後8時)

遊女屋に戻った花魁を中心に宴会が始まります。座敷の座る位置は、広い座敷なら床の間を背に花魁と客が並んで座りますが、そのときも上座は花魁です。そして花魁の左右には禿が座りますから、客の手が花魁に届くことはありません。

芸者や幇間も入れて、大賑わいです。この宴会での金の使い方で客の懐具合もわかるため、客も奮発します。引手茶屋から事前に頼んでおいた、「きのじや」の台の物(松を飾った蓬莱(ほうらい)台に卓袱(しっぽく)料理風に盛り付けられた料理)も届き、座を盛り上げます。

この座敷の端で、すべてを見透かしたように見ているのが、遣手(やりて)です。座敷で何か問題があったときに、心遣いをして解決してくれるので、その名が付いたとも言われています。

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夜四ツ(午後10時)

気の早い客はそろそろ床入りを望みますが、ここで最終目的を終わらせては、芸者や幇間は時間給ですし、宴会で儲けをしようという女郎屋としては売上げが上がりません。なので、客をあおって、まだまだ宴会が続くようにします。

正式には、この時間が吉原の営業時間が終わるときなのですが、どういうわけか、吉原では一時(いっとき)遅れの真夜九ツが終業時間という慣習になっています。

午前0時にやっと床入り、花魁は寝間着に着替え客の元へ?

真夜九ツ(午前0時)

この時間を吉原では「引け四ツ」といいます。町奉行から定められている営業時間を暗黙の了解で、伸ばしてもらって、この時間が営業終了時間です。

さすがに、この時間になると、宴会も終わり、いよいよ床入りの準備が始まります。

花魁は寝間着に着替えるために、座敷を離れ、別室で着替えます。自分の部屋で宴会をしていた場合は、控えの間に下がります。自分の部屋がない女郎は、同僚たちと共同で使っている支度部屋に下がります。

その間に、禿や振袖新造が客を便所に案内し、その間に若衆が部屋を片付けて布団を敷きます。床の準備ができたら、客は布団の上に座って、女郎の来るのを待ちます。